2016/06/29

Vol.141(3) トピックス「食事バランスガイドの遵守と死亡リスク」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.141
「食事バランスガイドの遵守と死亡リスク」
 食事バランスガイドは、健康で豊かな食生活の実現を目的に策定された「食生活指針」を行動につなげるものとして、平成17年に厚生労働省と農林水産省によって作られました。「何をどれだけ食べればバランスの良い食事になるか」が、コマのイラストで表されています。
 平成28年3月、国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC Study)から、食事バランスガイドの遵守と死亡との関連を調べた研究結果が公表され、食事バランスガイドの遵守度が高い人ほど、死亡リスク(特に脳血管疾患死亡リスク)が低いことが示されました。
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厚生労働省、農林水産省

調査の方法

  平成2年と平成5年に、全国11の保健所管内に住んでいる40~69歳の方々に、食事調査を含む生活習慣についてのアンケートを実施しました。5年後、より詳しい食事調査を含む2回目のアンケートを実施しました。今回の研究の対象となったのは、1回目、2回目のアンケート調査実施時点で、循環器疾患、がん、肝疾患のいずれにもかかっていなかった男女約7万9600人です。これらの対象者について、2回目の調査から平均約15年間の追跡調査を行いました。
 
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国立研究開発法人国立がん研究センターホームページを元に作成
 

食事のバランスを点数化

  食事バランスガイドの遵守度については、アンケート調査結果をもとに、次の7項目の摂取量について10点満点で評価し、計70点満点の食事バランスガイドの遵守点数を算出しました。

① 主食(ごはん、パン、麺)
② 副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)
③ 主菜(肉、魚、卵、大豆料理)
④ 牛乳・乳製品
⑤ 果物
⑥ 総エネルギー
⑦ 菓子・嗜好飲料由来のエネルギー

 遵守点数によって対象者を4つのグループに分け、その後平均15年間の総死亡および死因別の死亡リスク※との関連を調べました。なお、分析に影響する因子(年齢、性別、地域、肥満度、喫煙、身体活動、糖尿病既往歴、高血圧・脂質異常症の現病歴、職業、コーヒー・緑茶の摂取)はできる限り取り除かれています。

※死因別死亡:がん死亡、循環器疾患死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡

点数の高いグループで総死亡、循環器疾患死亡のリスクが低下

分析の結果、食事バランスガイドの遵守点数が高いほど総死亡のリスクが低下し、点数が10点増加するごとに総死亡リスクが7%減少していることが分かりました。死因別では、循環器疾患死亡、特に脳血管疾患死亡において、食事バランスガイドの遵守点数が高いほど死亡リスクが低くなっていることが分かりました(表1)。
 なお、循環器疾患では、副菜(野菜、きのこ、いも、海藻類)と果物の遵守点数が高い人で、死亡リスクの低下が顕著に認められました。また、脳血管疾患死亡のリスク低下は、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)の遵守点数が高い人で顕著でした。これらの結果は、循環器疾患や脳血管疾患のリスク低下に関する国内外の研究とも一致しています。

 
   表1 食事バランスガイドの遵守点数と死亡リスク
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国立研究開発法人国立がん研究センターホームページを元に作成

 「食事バランスガイドに沿った食生活をしている人ほど、総死亡や循環器疾患死亡のリスクが低い」という今回の研究結果は、食事バランスガイドを目安としてバランスの良い食生活を心がけることの重要性を、改めて示していると言えるでしょう。

 

参考

食事バランスガイドの遵守と死亡との関連について(国立研究開発法人 国立がん研究センター)
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3788.html

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