2012年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
新生児期消化管における粘膜免疫の発達とprobioticsが与える効果の検討
順天堂大学医学部小児科
大塚 宜一 先生
要旨
背景:胎児期の腸管は無菌状態であることから、出生後の腸内細菌叢の変化にともない、新生児期・乳児期から小児期にかけ、粘膜免疫機能にダイナミックな変化が起こっている。そこで出生直後および離乳期の仔ラットを対象に、Probiotics を投与した群とそうでない群の腸管粘膜における免疫関連分子の発現をmicroarray、RT-PCR、免疫組織染色を用い比較検討した。 方法:出生直後および出生後21 日の離乳期の仔ラットを対象に、呼吸および体温など全身管理を行いつつ、腸内細菌叢の検討、免疫・分子生物学的解析、組織学的検討を行った。さらに、B. breve 5×108 cfu/日を投与した際の影響を解析した。
結果:仔ラットにB. breve を投与したところBifidobacterium の割合の増加を認めた一方、Bacteroidesの割合の抑制を認めた。Microarray およびRT-PCR を用いた炎症性シグナル分子の発現については、新生児期の仔ラットにB. breve を投与した際、glutathione peroxidase 2、lipopolysaccharide binding protein、lipoprotein lipase などの炎症関連分子の発現の抑制を確認し、その抗炎症効果が示唆された。
一方、離乳期では、CD3 の発現亢進を認めるものの、co-stimulatory molecules の発現には変化を認めなかった。さらに、リンパ濾胞の増殖因子であるCXCL13 などの発現亢進及び組織におけるIgA 産生の亢進を認め、免疫寛容の誘導により適した環境が誘導されていることが示唆された。
考案:以上より、B. breve を投与することで、新生児期より認める炎症性シグナル分子の発現を抑える一方、経口免疫寛容の誘導にも効果がある可能性が示唆された。