2014/07/02

Vol.114(2) 2012年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告 「メタボロミクスを駆使した胎児・新生児発育に関する新規バイオマーカーの探索研究―母体の栄養状態の観点から―」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.114
2012年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
メタボロミクスを駆使した胎児・新生児発育に関する新規バイオマーカーの探索研究
―母体の栄養状態の観点から―

神戸大学大学院医学研究科 内科系講座 小児科学分野こども発育学部門 

貝藤 裕史 先生

 出生の間の分娩様式は、胎児および母性ストレスと強い相関があります。これまでの研究から、経膣分娩における胎児ストレスは、帝切児のそれよりも強いことが示されています。臍帯血は胎児の末梢血であり、母体に由来するさまざまな分子は通常、臍帯血へ移行することが知られています。現在まで、臍帯血における低分子代謝物を包括的に分析した報告はありません。臍帯血の代謝物を明らかにすることは、胎児の栄養あるいは分娩ストレスの評価に役立ち、さらに新生児あるいは乳児における成長発達と関連する可能性が高くあります。
 メタボロミクス(メタボローム解析)は、細胞または生物の代謝過程における総合的なデータです。メタボロミクスは最近急速に発展をとげ、薬剤学を含むさまざまな研究分野に応用されています。我々はすでに膵疾患領域、呼吸器疾患領域、消化器疾患領域についてメタボロミクスを応用し、これらの疾患と関連した血清代謝物を明らかにしました。本研究では、分娩における胎児ストレスの詳細を明らかにするため、ガスクロマトグラフィ/マススペクトロメトリ(GC/MS)を用いて臍帯血の代謝産物の変化を検討しました。
 

要旨

背景:分娩様式による胎児ストレスについて、代謝物レベルの差異から明らかにされた報告はこれまでにない。
目的:我々は、分娩における胎児ストレスの詳細について解析するため、ガスクロマトグラフィ/マススペクトロメトリ(GC/MS)を用いて、出生時の臍帯血における代謝物レベルの変化について調査した。
研究デザイン:本研究は、神戸大学医学部附属病院の関連施設であるパルモア病院におけるコホート研究である。2010年12月から2011年5月の間に検体を採取した。神戸大学医学部の施設内倫理委員会によって審査を受け、承認された後に行った。
被験者:出生直後の新生児41名から臍帯動脈血サンプルを採取した。
転帰尺度:血液サンプルの代謝物は、分娩方法(自然あるいは誘発分娩、または選択的帝王切開)が臍帯血の代謝物プロフィールに影響を及ぼしたかどうか調査するため、GC/MSを使用して測定された。
結果:選択的帝王切開で出生した新生児の臍帯血では、自然分娩による経膣分娩児と比較すると、イソロイシン、フルクトース、マンノース、ブドウ糖、アロース、グルクロン酸、イノシトールとシステインが低値となる傾向にあった。
結論:分娩と関連したストレスが臍帯血における代謝物(特にブドウ糖のようなサッカリド)レベルに影響を与えていることが判明した。

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