2014/04/28

Vol.111(3) トピックス 「日本人の食事摂取基準(2015年版) 改定のポイント」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.111
「日本人の食事摂取基準(2015年版) 改訂のポイント」
 平成26年3月28日、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書を取りまとめ、公表しました。「日本人の食事摂取基準」は、国民の健康の保持・増進を図るために摂取することが望ましいエネルギーおよび栄養素の量の基準が定められているもので、5年ごとに改定が行われています。  

「重症化予防」が策定目的に

 「平成25年度より開始した健康日本21(第二次)では、主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防を基本的方向として掲げています。そこで、日本人の食事摂取基準(2015年版)では、生活習慣病の予防について、発症の予防だけではなく、重症化の予防も視野に入れて策定が行われました(図1)。
 
図1 日本人の食事摂取基準(2015年版)策定の方向性
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「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」より
 

エネルギーの指標にBMIを採用

 現行の基準では、エネルギーの指標は、性・年齢階級・身体活動レベルごとの推定エネルギー必要量が示されています。しかし、健康の保持・増進、生活習慣病予防のためには、望ましい体格(BMI:body mass index)を維持するエネルギー摂取量(=エネルギー消費量)であることが重要です。そこで、今回の改定では、エネルギー摂取量および消費量のバランス(エネルギー収支バランス)の維持を示す指標として、BMIが採用されました。観察疫学研究で報告された総死亡率が最も低かったBMIをもとに、疾患別の発症率とBMIの関連、死因とBMIの関連、日本人のBMIの実態を総合的に検証し、成人期を3つの区分に分け、目標とするBMIの範囲が設定されました(表1)。
 
表1 目標とするBMIの範囲(18歳以上)
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「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」より作成
  
 目標とするBMIの範囲は男女共通で、あくまでも参考として使用すべきものです。なお、70歳以上では、総死亡率が最も低かったBMIと実態とのかい離がみられるため、虚弱の予防と生活習慣病の予防の両者に配慮し、当面目標とするBMIの範囲を21.5~24.9としています。 エネルギー必要量には個人差もあるため、単一の値として示すのは困難です。しかし、エネルギー必要量の概念は重要であること、目標とするBMIの提示が成人に限られていることなどから、参考表として推定エネルギー必要量も示されています。活用にあたっては、食事摂取状況のアセスメント、体重およびBMIの把握を行い、エネルギーの過不足は体重の変化やBMIを用いて評価する必要があります。  

生活習慣病予防のための「目標量」を充実

 栄養素の指標は、現行の基準と同様「摂取不足の回避」「過剰摂取による健康障害の回避」「生活習慣病の予防」の3つの目的からなる指標で構成されています。
 

① 摂取不足の回避を目的とした指標

  • 推定平均必要量(EAR:estimated average requirement)・・・半数の人が必要量を満たす量 ・ 推奨量(RDA:recommended dietary allowance)・・・ほとんどの人が充足している量
  • 目安量(AI:adequate intake)・・・十分な科学的根拠が得られずEAR、RDAを設定できない場合の代替指標。一定の栄養状態を維持するのに十分な量

② 過剰摂取による健康障害の回避を目的とした指標

  • 耐容上限量(UL:tolerable upper intake level)・・・健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限
③ 生活習慣病の予防を目的とした指標
  • 目標量(DG:tentative dietary goal for preventing life-style related diseases)・・・疾患のリスク等が低くなると考えられる栄養状態が達成できる量。現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量
 
 このうち、生活習慣病の予防を目的とした「目標量」を充実したことも、今回の改定のポイントです。2010年版では18歳以上のナトリウム(食塩相当量)の目標量が男性9.0g/日未満、女性7.5g/日未満とされていましたが、2015年版では高血圧予防の観点から、男性8.0g/日未満、女性7.0g/日未満と低めに変更されました。また、小児期からの生活習慣病予防のため、食物繊維とカリウムについて、新たに6~17歳における目標量が設定されました。
 
 日本人の食事摂取基準(2015年版)は、今回取りまとめられた報告書をもとに平成26年度中に大臣告示され、平成27年度より使用される予定です。
 
 
参考

・「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html
・日本人の食事摂取基準(2010年版)(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0529-4.html

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