2020/06/14

Vol.195 (2) 2018年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告 「低栄養は総死亡および癌死亡の予測因子であるか?-健常者の20年間追跡調査より-」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.195
2018年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
低栄養は総死亡および癌死亡の予測因子であるか?―健常者の20年間追跡調査より―
久留米大学 医学部 地域医療連携   
足達 寿 先生

要旨

 高齢者による低栄養の原因は、食事摂取量の減少が大きく影響しています。食事量が減少する原因には、生活活動度、嚥下機能、消化機能、味覚機能、さらには認知機能の低下などによる食欲の減退が関係するのではないかと考えられています。
 一方、最近の研究では、肉や卵といった動物性たんぱく質を多く摂取している高齢者は老化の速度が遅く、病気になりにくいといわれています。栄養管理が高齢者にとってとても大切ですが、個体差も大きく、個別の管理が重要になってきます。食べやすい炭水化物に偏らず、摂取栄養素のバランスの取れた食事ができるよう、細かな栄養調査に基づいた高齢者の栄養管理が必要となっています。

 

【内容】

 低栄養状態はQOLや予後を低下させる要因である。本研究において、栄養状態を反映する血清アルブミン値が全死亡と疾患特異的死亡の独立した危険因子であるのか、一般住民検診受診者の長期追跡調査の結果から関連性を検討した。

 1999年に福岡県久留米市田主丸町で実施した住民検診の参加者で、40歳以上の1,905名(男性783名、女性1,122名)を対象とし、15年間の死因を調査した。ベースライン時の血清アルブミン値を4分位にわけて分析を行った。

 ベースライン時の血清アルブミン値は、年齢、BMI、拡張期血圧、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、eGFRと有意な相関が認められた。これらを調整因子としてCox比例ハザード分析を行った結果、低アルブミンは全死亡(HR0.39,95CI:0.24-0.65)、癌死(HR:0.43,95%CI:0.18-0.99)、感染症による死亡(HR:0.21,95CI:0.06-0.73)、脳血管疾患死(HR:0.19,95%CI:0.06-0.63)の独立した予測因子であった。また、最低四分位群に対する最高四分位群の全死亡と脳血管疾患死の交絡因子で調整後のハザード比は、それぞれ0.590.39-0.88)、0.150.03-0.66)であった。

 健常な一般住民において、血清アルブミン値レベルは将来の総死亡と疾患別死亡の予測因子であることが示唆された。今後、さらに追跡調査期間を延長し、20年間の調査結果を公表する予定である。

 

 

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