2018年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
新規非アルコール性脂肪性肝疾患モデルを用いた乳製品・プロバイオティクスによる予防効果の検証
北海道大学大学院 農学研究員
石塚 敏 先生
要旨
著者らは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)モデルとして利用しうる新たなモデルを構築した。一次胆汁酸の一種であるコール酸を一定の範囲で負荷した餌を与えたラットは、肝臓への脂肪蓄積は生じるものの、肝の繊維化等の重篤な症状を呈さない単純性脂肪肝のモデルとなることを見出した。ここでは、この新しいNAFLDモデルを用い、ゴーダチーズや有胞子プロバイオティクスとしてのBacillus coagulansを含む食品の非アルコール性脂肪肝に対する予防効果について検討した結果を紹介している。
【内容】
エネルギー摂取過多の状態で増加する一次胆汁酸であるコール酸(CA)をラットに与えると、肝での脂質蓄積や消化管バリヤ機能の脆弱化、ならびに血中アディポネクチン濃度の低下など、各種症状を引き起こすことを新たに見出した。この実験系を活用し、乳製品やプロバイオティクスの脂肪性肝疾患に対する予防効果について検討することにした。WKAH/HkmSlc雄性ラットを予備飼育後、AIN-93G処方の餌1)を与えた対照群、これにCA添加飼料を与えた群(CA)を設定した。飼料中タンパク質をゴーダタイプのチーズに置換した上でCAを加えた飼料(CAC)を与えた群では、CA負荷で生じる腸管バリヤ機能低下や肝への脂質蓄積が部分的に改善する傾向が示された。また、有胞子乳酸菌であるBacillus coagulansを含む食品もCA添加飼料による諸症状を軽減することが明らかとなった。これらの症状を抑制するメカニズムについては、明確化できていないものの、多様な機構の存在が示唆された。本研究で用いた非アルコール性脂肪肝モデルは、様々な食品の機能性評価に有用であり、ある種の乳製品やプロバイオティクスが脂肪性肝疾患の抑制に有効である可能性が示唆された。
1)AIN-93G:米国国立栄養研究所より発表された栄養研究のための標準精製飼料