2014/02/07

Vol.107(3) 健康・栄養に関する学術情報 「母乳栄養乳児の腸管におけるビフィズスフローラ生成の謎 ヒトとビフィズス菌による腸内フローラ形成戦略」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.107
健康・栄養に関する学術情報

母乳栄養乳児の腸管におけるビフィズスフローラ生成の謎 ヒトとビフィズス菌による腸内フローラ形成戦略
 
ヒトの腸内には多くの細菌が生息しており、腸内フローラと呼ばれる生態系を形成しています。大腸内容物や糞便中には100種類以上の菌が1g当たり100-1,000億個にも上るほど存在しています。また、腸内フローラの状態の違いは健康や疾病にも影響します。各種動物もそれぞれ特徴的な腸内フローラを持っていますが、ヒトは他の動物と比較してビフィズス菌が多いのが特徴です。特に乳児においては最優勢菌として存在します。その理由として母乳中にビフィズスファクターが存在すると考えられ、オリゴ糖がその本体と考えられていましたが、詳しくは分かっていませんでした。最近になりビフィズス菌の持つ分解酵素の研究の進展によりようやくその意義が明らかになってきました。今回はその研究の中心を担ってきた片山博士が解説した論文を紹介します。
 
人乳中にはヒトミルクオリゴ糖(HMO: human milk oligosaccharide)と総称されるオリゴ糖類が1-2%含まれています。今から60年ほど前にこれがビフィズスファクターの本体であるという説が提唱されましたが、当時の研究ではこれらを分解した単糖の効果のみを考えていたため、ビフィズス菌への特異性を説明出来ませんでした。筆者らはビフィズス菌からHMOに特異的な二糖類を切り出す酵素を発見しました。また、それら二糖類を取り込むトランスポーターや分解酵素も発見され、これらがゲノム解析された腸内細菌の中でビフィズス菌のみが保有することが明らかとなっています。これらの発見は、HMOがビフィズスファクターであるということを示唆しています。

 参考

  
 詳細は下記論文をご参照下さい。
 
 片山高嶺

 母乳栄養乳児の腸管におけるビフィズスフローラ生成の謎 ヒトとビフィズス菌による腸内フローラ形成戦略
 化学と生物 50 (1) : 2–5,2012

 
 本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/50/1/50_2/_pdf
 

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