第21回ダノン健康栄養フォーラムより
これからの管理栄養士への期待 ~日本人の食事摂取基準(2020年版)を踏まえて~
厚生労働省 健康局健康課 栄養指導室 室長
清野 富久江 氏
日本では高齢化が世界に例を見ない速さで進んでいます。そして、高齢者が増加すれば、在宅医療や在宅介護を受ける方の数も増加します。2025年には、平成24年に比べて在宅医療を受ける人数が約1.7倍、在宅介護を受ける人数が約1.4倍に増加するとも試算されています。このような状況に管理栄養士がどのようにアプローチしていくのかが課題となっています。
栄養政策を取り巻く社会情勢と食事摂取基準(2020年版)の策定
国際的な動きとしては、2020年に「成長のための栄養サミット2020(Nutrition for Growth(N4G) Summit)」が日本で開催されることが決まっています。栄養サミットはロンドンオリンピックを契機として国際的な栄養の取り組みを推進していこうというもので、栄養不良の子ども達を減らしていくという目標などが掲げられています。
日本人の食事摂取基準(2020年版)の策定に向けた検討も、このような社会情勢を踏まえて行われました。高齢化の進行という観点では、高齢者の低栄養の予防そしてフレイル予防のための目標量の設定について検討されました。また、高齢社会において社会全体を支える担い手である若い世代、特に小児について、一部未策定だった摂取基準の設定についても検討されました。根拠に基づく政策立案の推進という観点では、国際指針も踏まえたレビューの方法や記載の標準化、透明化を図ろうということで、目標量についてエビデンスレベルが記載されることになりました。また、国際的な動きという観点では、栄養サミットの開催に合わせ、食事摂取基準をはじめとした日本の政策を海外に積極的に発信することについて検討されました。
各値の策定に用いた考え方は栄養素によって異なり、それについて理解が進むように、2020年版では脚注などを充実させているので、しっかりと解説の部分を読んで活用していただければと思います。す。
健康寿命の延伸に向けた取り組み
これからの管理栄養士への期待
管理栄養士の仕事の場は、乳幼児から児童生徒、成人、高齢者と様々です。厚生労働省においても、平成12年に栄養士法を改正して以降「ヒューマンニュートリション」に着目し、管理栄養士・栄養士の育成をしてきています。対象者の生活なども踏まえて栄養管理を行える広い視野を持って仕事ができる管理栄養士・栄養士であることが、今後一層求められるのではないかと考えています。栄養の専門職として、科学的根拠に基づいて一人一人の生活や暮らしに寄り添う管理栄養士の皆さんの活躍に期待しています。