2019/11/15

Vol.188 (3) トピックス 「12年ぶりに改定された授乳・離乳の支援ガイド、そのポイントとは?」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.188
「12年ぶりに改定された授乳・離乳の支援ガイド、そのポイントとは?」
 2019年3月、授乳・離乳の支援ガイドが改訂されました。授乳・離乳の支援ガイドは、妊産婦や子どもに関わる保健医療従事者を対象として平成19年に作成されたもので、所属する施設や専門領域が異なっていても授乳や離乳の望ましい支援の基本的な事項を共有して一貫した支援を進めていくためのガイドとして、広く活用されてきました。しかし、作成されてから約10年が経過し、育児環境や就労状況の変化、科学的知見の集積など、授乳・離乳を取り巻く社会状況も変化してきたことから、有識者による研究会を立ち上げ、内容の検証や改定に向けた検討が行われました。 
 12年ぶりに改定された授乳・離乳の支援ガイド。具体的にはどのようなところが変わったのでしょうか?今回は、その主な変更点についてご紹介します。

【ここが変わった①】
  離乳食の進め方の目安がより分かりやすく

 授乳・離乳の支援ガイドには、離乳食の進め方の目安を示した表が掲載されています。改定版の表には、各時期における食べ方の目安や各食品群の目安量、調理形態と併せて、歯の生え方や摂食機能の目安も記載されており、子どもの発達段階に即した離乳食の在り方が一目で分かりやすい内容となっています。

 なお、従来のガイドでは離乳食の進行段階について「5、6か月頃」「7、8か月頃」「9か月から11か月頃」「12か月から18か月頃」と月齢で表していましたが、今回の改定ではそれぞれ「離乳初期」「離乳中期」「離乳後期」「離乳完了期」とされました。

                     離乳食の進め方の目安(従来版)

授乳・離乳の支援ガイド(2007年版)より

 

                    離乳食の進め方の目安(改訂版)

授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)より

【ここが変わった!②】
  栄養法(母乳栄養、人工栄養、混合栄養)ごとの支援のポイントを明記

 授乳の支援においては、乳汁の種類(母乳、育児用ミルク)にかかわらず、母子の健康の維持や健やかな母子・親子関係の形成を促し、育児に自信を持たせることが基本となります。従来版のガイドでは、授乳支援のポイントについて「母乳育児」「育児用ミルク」の2つの観点から記載されていましたが、今回の改定では、「母乳」「育児用ミルク」「混合栄養」の3つのパターンについて詳細に記載されました。

  • 【ここが変わった!③】
      食物アレルギー予防に関する支援が充実

     従来のガイドでは、食物アレルギーについては参考として記載されていました。しかし、近年の食物アレルギーに関するエビデンスなどを踏まえて、改定版では食物アレルギーに関する支援について新たな項目として記載されました。離乳の開始や特定の食物の摂取開始の時期を遅らせることによって食物アレルギーを予防できる根拠はないことから、生後5~6か月頃から離乳食を開始することとされています。なお、従来のガイドでは生後7~8か月頃からとされていた卵(卵黄)の摂取時期が、今回の改定では離乳初期である5~6か月からとされました。

     また、子どものアレルギー疾患予防のために母親が特定の食品を極端に避けたり過剰に摂取したりする必要はなく、バランス良く食べることが重要であることが明記されました。

【ここが変わった④】
  イオン飲料の摂取について新たに記載

 従来のガイドでは、果汁についてのみ、離乳開始前に与えることによる栄養学的意義がないことが記載されていましたが、改定版ではそれにイオン飲料も追記されました。イオン飲料の多量摂取による乳幼児のB1欠乏も報告されていることから、イオン飲料については授乳期から離乳期を通して摂取する必要がなく、必要な場合は医師の指示に従うこととされています。

【ここが変わった⑤】
  生後6か月からの鉄・ビタミンDの意識的な摂取について記載

 改定版のガイドでは、母乳育児の場合には生後6か月時点でヘモグロビン濃度が低く鉄欠乏を生じやすいという報告があること、また、ビタミンD欠乏の指摘もあることから、母乳育児を行っている場合には適切な時期に離乳を開始し、鉄やビタミンDの供給源となる食品を意識的に取り入れることが重要である旨が記載されました。ビタミンDについては、欠乏によるくる病の増加、欠乏に日光照射不足が影響することも記載されています。なお、従来のガイドでは、鉄については生後9か月以降で不足しやすいとされ、ビタミンDの不足については記載されていませんでした。

【ここが変わった⑥】
  乳児ボツリヌス症についての情報が詳細に

 乳児ボツリヌス症予防の観点から満1歳まではちみつを使用しないことについては従来のガイドにも記載されていましたが、国内で初めての乳児ボツリヌス症による死亡事例が発生したことを受け、改訂版では1歳を過ぎるまではちみつを与えないよう明記されるとともに、参考資料として乳児ボツリヌス症に関する情報も記載されました。

 

 その他、災害時における授乳・離乳の支援や、インターネットで販売される母乳に関する注意喚起、また、平成30年に国内での製造・販売が解禁された乳児用液体ミルクに関する情報が新たに記載されるなど、改訂版のガイドは現在の育児環境等により即した内容となっています。

 

 近年、離乳や授乳に関する情報はインターネットなどからも容易に入手できるようになりました。一方で、実際の育児は入手した情報の通りに対応できるとは限らず、母親など育児に関わる方が不安やトラブルに直面することもあるでしょう。保健医療に携わる専門職には、授乳・離乳の支援ガイドを活用しながら、母親などの気持ちに寄り添った適切な支援を行うことが求められています。

 

詳細は下記をご参照下さい。
授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html

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