2017年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
乳酸菌によるKEAP1-NRF2制御系の活性化と加齢疾患予防効果の検討
東北大学加齢医学研究所
本橋 ほづみ 先生
要旨
生体は外界から酸素を取り込むことで、エネルギーを得て活動しています。逆に、酸化による生体のさびつきが生じてくる弊害を解消していかなければならない宿命を抱えています。ここで紹介するKEAP1-NRF2制御系は、そのための中心的な働きを担っています。このうち、NRF2の活動は炎症を鎮める働きがあり、認知機能の改善に役立ったりすることがわかってきました。そうすると、NRF2を活性化する食品などを選びたいと考えますね。筆者らは、NRF2の活性化具合を簡単に判定できるマウスを作り上げることに成功しましたので、これから、いろいろな食品や乳酸菌などを与えて、最も抗酸化能が高い物質を選んでいく入り口に立つことができるようになりました。これから老化を防ぐ体にいい食品の登場が期待できますね。
【内容】
KEAP1-NRF2制御系は、酸化ストレス応答機構において中心的な役割を果たし、生体防御の鍵を担っている。これまでの我々を含む多くの研究者の解析により、NRF2の活性化が様々な病態の改善に有効であることが明らかにされている。最近の我々の研究から、NRF2の活性化が慢性炎症やアルツハイマー病の改善に有効であることが示唆されている。本研究では、長期間にわたる体内におけるNRF2活性化の履歴を単一細胞レベルで評価できるモニタリングマウスの開発を行った。NRF2のアミノ末端領域に存在するストレス応答性デグロンを利用して、酸化ストレス応答的にCreリコンビナーゼが全身の細胞で安定化するトランスジェニックマウスを作成した(Neh2-Creマウス)。このマウスを、Rosa-LSL-tdTomatoマウスと交配して得られた複合変異マウスは、単回のNRF2活性化剤投与では変化がなかったが、反復投与によりtdTomato陽性細胞が徐々に増加した。長期にわたるNRF2誘導剤の効果を評価するためのモニタリングマウスとして利用可能と考えられる。