「肥満対策は幼児期から!」
なぜ幼児期からの肥満対策が重要か?
新生児期から幼児期の体脂肪率の推移を見てみると、男女とも1歳頃までには皮下脂肪組織に脂肪が蓄積し、体脂肪率は20%前後まで上がります。その後、2~3歳で減少傾向に転じ、6歳頃に底値となり、女児では7歳頃から再び上がり始めます。本来、スリムな体型となるべき幼児期に見られる肥満の背景には、遺伝的または環境的な肥満の要因があると考えられます。つまり、幼児期は肥満を予防するための介入時期として重要であるということです。
WHOの指針では、幼児期は非感染性疾患(non communicable disease : NCD)のリスク要因である高血圧や2型糖尿病、肥満等の予防効果が期待できる重要な介入時期とされています。また、最近のコホート研究では、30歳台の内臓脂肪型肥満には幼児期の急激な体重増加が関与していることが報告されており、これらも幼児期からの肥満対策の重要性を示しています。
幼児肥満の判定と食事指導
肥満の判定法の1つにbody mass index(BMI)がありますが、乳幼児期のBMIは、生後6か月までに急増してピークとなった後徐々に低下し、5歳頃に最も低くなり、再度上昇に転じます。このように、年齢によってBMIが大きく異なる幼児期の体格評価にBMIの絶対値を用いることは困難であり、わが国では実測体重と標準体重を比較した「肥満度」を用いて小児の肥満の判定を行っています。児童生徒では+20%以上で肥満と判定されますが、幼児の場合は肥満度+15%以上が肥満とされます。肥満度の区分ごとに体格の呼称も決められており、+30%以上で「ふとりすぎ」、+20%以上+30%未満で「ややふとりすぎ」、+15%以上+20%未満で「ふとりぎみ」となっています。
肥満度区分と体格の呼称
「幼児肥満ガイド」より
- 幼児は一般的に“幼児体型”と呼ばれるふっくらとした体型をしていることから、肥満をあまり意識されません。一方で、就学前までの肥満は学童期以降まで持ち越し、さらに悪化することが知られています。また、3歳健診の後には就学前まで集団検診の機会もないことから、家庭において体重測定を行うなどして、太り始めたら早めに対策を始めることが重要です。なお、1年間で3kg以上の急激な体重増加は肥満の兆しと考えられます。
幼児肥満対策の食事指導では、食事内容の偏りを正したり、適正な食品を選んだり、生活習慣を見直すことに重点が置かれます。家族構成、両親の体格、本人の発育歴、起床から就寝までの過ごし方、食習慣などの背景を考慮し、1日3回の食事と1回の間食を基本に、早寝早起きの生活リズムを身につけることなどを指導します。具体的な食事指導内容の例
✓大皿盛りではなく、主食・主菜・副菜の組み合わせで個別に盛り付ける
✓主菜は肉類に偏らず、卵類、魚介類などまんべんなく取り入れる
✓野菜や海藻を使ったよく噛める料理を増やす
✓味付けの工夫や手伝いなどを通して子ども自身の食べたい気持ちを引き出す
✓塩分の多い加工品や塩蔵品、卓上調味料などの使用を控える
✓外食や甘い飲みものを減らす
✓不足しがちな魚介類、豆類、野菜類、果物類の摂取を増やせるよう、試したくなる献立例を具体的に挙げる
✓孤食を避け、楽しい食卓を心がける - 「幼児肥満ガイド」をもとに作成
詳細は下記をご参照下さい。
「幼児肥満ガイド」について(公益社団法人日本小児科学会)