2018/12/14

Vol.175 (3) 健康・栄養に関する学術情報 「食生活 + 運動が、高齢期のサルコペニア・フレイルに効果!」

 

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.175
健康・栄養に関する学術情報
食生活 + 運動が、高齢期のサルコペニア・フレイルに効果!
 「サルコペニア(サルコ=筋肉、ぺニア=喪失)」は筋肉量の減少、筋力の低下、身体機能の低下を特徴とする症状を表す用語ですが、「フレイル」は、精神要素、社会要素なども加えた高齢期における機能減退状態を広く捉えた概念といえます。加齢にともないサルコペニアやフレイルになる人が増加しますが、これらは脳血管疾患、認知症、転倒骨折・関節疾患などとともに高齢者が要介護になる主な原因として、大きな社会的問題となっています。先のメールマガジントピックスでも紹介しましたが、平成29年度国民健康・栄養調査でも高齢者の筋肉量や生活の様子についての把握が行われました。

https://www.danone-institute.or.jp/mailmagazine/6331/ 

 今回は高齢期の健康と密接に関連する、筋量、フレイル、サルコペニア肥満に対する栄養と運動の効果についての疫学研究を主とした総説論文を紹介します。

(内容)
以下の項目について、次のような内容を詳しく解説しています。

  1. はじめに
  2. 筋量に対する栄養と運動

(1)運動が筋量に及ぼす影響

多くの研究のメタ解析の結果、レジスタンストレーニング(筋トレ)により筋量が増えることが示されている。

(2)栄養補充が筋量に及ぼす影響

たんぱく質補充より同量の必須アミノ酸補充の方が効果が高く、高齢者ではより多くのロイシン摂取が必要であることが示されている。一方、メタ解析の結果、たんぱく質補充による筋量の増加は見られるが、筋力の向上に有意差は見られず、今後の検討が必要とされる。

3.フレイルに対する栄養と運動

フレイルは身体的、社会的、オーラル、認知的フレイルに分けられる。 身体的フレイルは「筋力の衰え、歩行速度の低下、活動量の減少、疲労、体重減少」の診断基準を用いるが、これらの指標の改善支援の中で、栄養支援、運動支援が軸になっている。

(1)身体的フレイル状態の解消に対する運動・栄養の効果

報告は少く、既報5論文では論文ごとに有効性の有無に違いがある。

(2)地域在住身体的フレイル高齢者に対する運動・栄養による介入の効果

筆者らの研究で、運動+栄養の組み合わせでフレイル解消率は高かった。一方、効かない人の分析結果では「痛み」への対策が必要なことが分かった。

  1. サルコペニア肥満に対する栄養と運動

(1)サルコペニア肥満の問題点

サルコペニアに脂肪の過剰蓄積の重なったサルコペニア肥満への対策が必要と言われるようになったが、現状では介入研究は少ない。

(2)地域在住サルコペニア肥満に対する運動・栄養介入の成果

筆者らの研究で、運動+栄養(ビタミンD補充を含む)の組み合わせで体脂肪の減少、歩幅の増加、血中ビタミンDの増加は認められたが、他の指標には有意差が見られず、今後の研究が必要である。

参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

金 憲経 「高齢期における食生活と運動について」
日本食生活学会誌 29 (2), 89-98,2018

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/29/2/29_89/_pdf/-char/ja

 

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