2018/12/14

Vol.175 (2) 第20回ダノン健康栄養フォーラムより 「健康づくりのための運動と栄養(ロコモ・フレイル対策 美しく立つ」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.175
第20回ダノン健康栄養フォーラムより
健康づくりのための運動と栄養(ロコモ・フレイル対策 美しく立つ)
帝京科学大学 医学教育センター 特任教授
一般社団法人美立健康協会 代表理事 
 渡會 公治  先生

 
ヒトは進化の過程で骨盤が大きくなるとともに顎が小さく変化し、二足直立して歩行するようになりました。「人間は立っているから腰や膝が痛くなる」と言われることがありますが、400万年の進化の中で身体の方も適応しています。構造を理由にするのではなく、構造に合った身体の使い方を理解して上手に使うことが重要です。

 また、近年は人間の生活も大きく変化しました。多くの人が貧しい生活を強いられた昭和初期から「飽食の時代」と言われるようになり、車の普及とともに糖尿病の患者数も増加し、ロコモティブシンドロームやメタボリックシンドロームも問題となっています。「健康のためには昭和30年代の生活が良い」とも言われますが、その時代に返るのは意味がないことです。生活の変化を踏まえてダイエットやトレーニングを行うのが賢いやり方と言えるでしょう。
 このように、高齢社会において健康寿命を延伸するためには、ヒトとして進化してきた身体を理解すること、現代生活を送る中で身体能力が変化していることを理解すること、そして身体を上手に使うことが重要だと考えています。

ロコモ対策 3つの”S”

 近年、高齢になって立てなくなったり、歩けなくなったりする「ロコモティブ症候群(ロコモ)」が問題視されています。介護が必要な状態にならないように、また、ロコモにならないようにするためには、身体が動けるように手入れをしておくことが必要です。その中で私が勧めたいのが、シンプルでありながら奥が深い体操、3つの“S”「スクワット(Squat)」「ストレッチ(Stretching)」「背骨を動かす(Spine exercise)」です。

 

① スクワット

 スクワットを行う時、膝を曲げる方向とつま先が違う方向を向いていると、膝にかかる力を吸収できず、障害の原因となります。私自身、膝の痛みを訴えている人をよく診察してみると、脛や足首、足の親指の付け根、腰など色々な部分に痛みがあるケースを経験します。これは、使い方が悪いために色々なところに負担がかかっているのです。そのことを教育するために考案したのが、壁を利用したスクワットです。壁のコーナーにお尻を、壁に足と膝をつけるようにしてスクワットを行うと、膝とつま先の向きが同じになります。医学用語でアライメント(並び方)と言いますが、大腿四頭筋、膝蓋骨(膝の皿)、膝蓋腱がまっすぐ並ぶと、膝にストレスがかからなくなります。

 また、膝だけ前に出すようなスクワットでは大腿四頭筋だけに力が入り、ハムストリングに力を入れることができなくなります。ハムストリングは太腿の裏にある、膝を曲げたり股関節を伸ばしたりする筋肉です。ハムストリングに力が入らないと、膝への負担が大きくなり、膝を痛めることにつながります。スクワットを行う時には膝がつま先よりも前に出ないように膝を曲げるようにすることが大切です。


                                    一般社団法人美立健康協会ホームページより
② ストレッチ

 股関節を中心とした背骨から下肢までをつなぐ筋肉を柔らかくするために考えたのが「真向法」です。真向法は、多関節筋(大腰筋、内転筋、大腿直筋、ハムストリングス)をしっかりストレッチし、背骨のアライメントを良くする健康体操です。


                                                                                                                                             一般美立健康協会ホームページより

③ 背骨を動かす

 背骨を動かすのに良い体操として紹介したいのが「背骨ほぐし肘まる体操」です。手を肩甲骨の上に乗せ、肩甲骨と背骨を使って大きく円を描きます。肩甲骨、背骨が動くように回すのがポイントです。この体操を継続することで、首のこり、五十肩、肩こりなどの改善効果が期待できます。
                                    一般社団法人美立健康協会ホームページより

 ロコモティブ症候群の対策としてこのような体操は有効ですが、ただやれば良いというものではありません。高頻度に低回数、疲れないように小出しに行うことが大切です。ある患者さんは“三食寝る前トイレのたびに”思い出して行うようにしているそうです。このように、3つの“S”を自分の健康のために新しい生活習慣として継続するとともに、バランスのよい食事や睡眠、社会活動を行っていくことが重要でしょう。

講演ダイジェスト動画

▽第20回ダノン健康栄養フォーラムの概要は、以下をご覧ください↓

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