2018/09/18

Vol.172 (3) トピックス 「広がる“子ども食堂”の取り組み 食育の場としての意義とは」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.172
「広がる“子ども食堂”の取り組み 食育の場としての意義とは」
 家庭での食事は家族のコミュニケーションの場であるとともに、子どもの食育の観点でも重要な役割を果たしています。しかし近年、共働き家庭や一人親家庭など、家族や生活の在り方が多様化するとともに、子どもの「孤食」や「欠食」などの問題が注目されるようになりました。

 そのような中、民間の団体等が主体となり、無料(または安価)で子どもに食事を提供する「子ども食堂」の取り組みが全国各地に広がっています。主に朝食を提供する子ども食堂もあれば、夕食を提供する子ども食堂、給食がない日には昼食を提供する子ども食堂もあり、また、毎日開催しているところもあれば限定した日に開催しているところもあるなど、その運営スタイルも様々です。
 子ども食堂は、単なる食事支援の場ではなく、食育の場としても大きな意義を持っています。今回は子ども食堂の食育としての側面を、事例を交えてご紹介します。

共食の場としての子ども食堂

 子ども食堂には地域の高齢者やボランティアスタッフが関わっていることも多く「大人と会話をしながら食事をとる中で行儀よく食べることなどを教わっている」「顔見知りになるにつれ元気な挨拶ができるようになった」などの事例が報告されています。また、子ども世代、親世代、祖父母世代が交流をすることは子どもの豊かな経験につながるだけでなく、地域の高齢者にとっても生きがいとなるなど、相互に良い効果を生み出しています。

食経験を広げる場としての子ども食堂

 子ども食堂の中には、子ども自身が調理や配膳に携わるスタイルをとっているところもあります。自分でサンドイッチの具を選んだり、料理の味付けを2種類から選べるようにしたりと工夫することで、子どもは自分で食べ物を選ぶ楽しみを味わうことができます。また、ある子ども食堂では、子ども向けのお弁当教室を開催した際に、自分のお弁当を作った後で、自然と家族の分のお弁当を作り始めたり、家族に手紙を書いたりする子どもの姿が見られたそうです。子ども食堂での食経験が感謝の気持ちも育んでいるのかもしれません。

望ましい食習慣を身につける場としての子ども食堂

 ある子ども食堂では、カフェテリア形式を採用し、子どもが自分でトーストを焼いたりフルーツを皿に盛ったりすることで、家庭でも自分で朝食を用意して食べられるようになることを目指しています。また、周りの子どもが食べている様子を見ることで、それまで食べられなかった食べ物が自然と食べられるようになったケースもあるなど、子ども食堂での経験が望ましい食習慣につながっている事例が報告されています。

地域連携で推進する子ども食堂の食育

 子ども食堂の運営にあたっては、来て欲しい人や家庭の参加が難しいこと、運営費(食材含む)やスタッフの確保が難しいことなど課題も多くあります。そこで重要になるのが、地域の個人や団体、企業、自治体などとの連携です。多くの子ども食堂では、保育所や幼稚園、学童クラブ、PTAなどから参加者募集の協力を受け、また、農家や食品メーカー、フードバンク、スーパーなどから食材の提供を受けるなど、地域との連携でこれらの課題の解決を図っています。

「子ども食堂」は、家族との共食が困難な子ども達に食事の楽しさを伝え、食に関する理解を深める、とても意義深い取り組みです。今後、多方面の協力・連携のもとで更に広がり、子ども達の心身の健やかな成長の一助となることが期待されています。

 

参考

子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集~地域との連携で食育の環が広がっています~(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomosyokudo.html

こども食堂ネットワーク
http://kodomoshokudou-network.com/

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