メールマガジン「Nutrition News」 Vol.168
2016年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
BDNF遺伝子多型が子どもの身体と脳と認知の発達に与える影響の解明
東北大学加齢医学研究所 認知機能発達寄附研究部門
2016年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
BDNF遺伝子多型が子どもの身体と脳と認知の発達に与える影響の解明
東北大学加齢医学研究所 認知機能発達寄附研究部門
橋本 照男 先生
要旨
脳由来神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor, BDNF)は脳の発達に重要なタンパク質で、その遺伝子多型は成人のBody Mass Index (BMI)と関連がある。BDNF遺伝子多型であるVal66Met(66番アミノ酸のVal(バリン)からMet(メチオニン)への変異)と、BMIは、それぞれ脳形態に影響を与えることが分かっている。しかし、Val66Met、BMI、脳の三者の関係は調べられておらず、子どもにおいてはVal66MetとBMIの関係も検討されていない。
そこで本研究では、健康な子どもにおいて、BDNF遺伝子多型Val66MetがBMIと脳の神経連絡の発達に与える影響を検討した。変異型を持っているだけでは知能にも体型にも影響がなかったが、変異型を持つ子どもは、発達期に太らないほうが、言語学習に関わると考えられる神経連絡の発達が促進されていた。脳の発達に関わる遺伝子が、体型の発達とも関わっていることが示唆される結果であった。