2018/07/17

Vol.169 (3) トピックス 「豊かな食生活の裏側にある問題 -食品ロスを考える」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.169
「豊かな食生活の裏側にある問題 -食品ロスを考える」
 現代の日本の食生活は「飽食の時代」と言われています。24時間営業している飲食店やコンビニエンスストアなどのおかげで、私たちは好きな時に食べ物を手に入れることができます。一方で、日本の食料自給率は38%(平成28年度、カロリーベース)と、先進国の中でも最低の水準であり、日本の豊かな食生活は、食料を輸入することによって支えられているのが現状です。

 そのような中、近年問題となっているのが「食品ロス」の増加です。例えば今年の節分の翌日、テレビには廃棄される大量の恵方巻が映し出されていました。食料の多くを輸入に依存しながら食べられるものを大量に捨てている現実に、“豊かさ”の意味を考えさせられます。

食品ロスの現状

 日本の食品ロスの量は、年間646万トンと推計されています(平成27年度)。その内訳は、食品事業者によって廃棄されるもの(規格外、返品、売れ残り等)が357万トン、一般家庭によって廃棄されるもの(食べ残し、過剰除去、手つかずの食品)が289万トンとなっています。

 世界に目を向けてみましょう。国連によると世界の栄養不足人口は約8億1,500万人であり、約1億5,000万人の5歳未満の子どもが発育阻害にあるとされています。国連世界食糧計画(WFP)では、年間約320万トンの食糧援助を行っていますが、日本ではその約2倍に相当する量の食品が、「まだ食べられるのに」捨てられているということです。

私たちの意識は?

 平成30年3月、消費者庁は18歳以上の男女3,000人を対象に、食品ロス削減の周知及び実践状況等について調査を行った「平成29年度 消費者の意識に関する調査結果報告書 ―食品ロス削減の周知及び実践状況に関する調査―」を公表しました。それによると、食品ロス問題について知っていると答えた割合は73.4%で、平成28年度の調査結果(65.4%)よりも増加しています。しかし、これを年代別に見てみると、60代、70代以上では「知っている」と回答した割合が80%を超えているのに対し、20代、30代では「知っている」と回答した割合が50%台と、若い世代において認知度が低い傾向が見られました。同様に、今後食品ロスを減らすために「積極的に取り組んでいきたい」と回答した割合が最も高いのは70代以上(70.3%)で、最も低いのは20代(39.0%)でした(図1)。

図1 食品ロスを減らすための今後の取り組み(年代別)

平成29年度 消費者の意識に関する調査結果報告書(消費者庁)より

食品ロスの削減に向けて

 現在、消費者庁・文部科学省・環境省・経済産業省・農林水産省の連携のもと「NO-FOODLOSS PROJECT」を展開し、事業者やフードバンク活動の支援、消費者への普及啓発など、食品ロス削減を国民運動として推進しています。

NO-FOODLOSS PROJECTのロゴマーク「ろすのん」

 

 

 これからの管理栄養士・栄養士には、食の専門家として、食品ロスに関する現状を認識するとともに、食育等の活動を通して食べ物を大切にする気持ちや食べ物を無駄にしないための方法や工夫(調理法等)を広く伝えていくことも求められているのではないでしょうか。


参考

食品ロスの削減に向けた取組について(消費者庁)

http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/

 

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