メールマガジン「Nutrition News」 Vol.169
2016年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
乳製品摂取習慣による高齢者の口腔常在菌叢の改善に関する研究
国立感染症研究所
2016年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
乳製品摂取習慣による高齢者の口腔常在菌叢の改善に関する研究
国立感染症研究所
泉福 英信 先生
要旨
口腔には、700種類以上の常在微生物が存在し、それらの菌が口腔表面でバイオフィルムを形成することがある。口腔常在微生物は、通常病原性が低く、外来微生物の侵入および感染を防ぐ役割をしている。一方、バイオフィルムは、菌が厳しい環境で生き残れるように活動した姿である。口腔常在微生物によりバイオフィルムが形成されると、様々な微生物が付着するケースが見られる。特に口腔清掃習慣が上手くいかず、バイオフィルムの磨き残しが増えると、口腔バイオフィルム形成菌の量が増えクオラムセンシング(菌高濃度感知, QS)が起こり、死菌が増える。その結果、死菌は常在菌として機能できず、微生物の感染を制御できなくなる。本研究の目的は、ヨーグルトのような乳製品の摂取を習慣にすることで、このような状態を改善できないか、バイオフィルム微生物にどのように影響し、微生物の付着増加を抑えるかを検討することとした。
ヨーグルトを高齢者に昼食2時間後に毎日1回摂取することを2週間続けてもらい、ヨーグルト摂取の日和見菌へ影響を検討した。さらに、次世代シークエンサーを利用して、口腔細菌叢のメタゲノム解析を行い、ヨーグルト連続摂取の口腔細菌叢への影響も検討した。その結果、ヨーグルトを連続摂取することで、バイオフィルム形成菌量を減少させ、バイオフィルム形成菌以外の微生物の付着および増加を抑える可能性が考えられた。またアンケート調査と口腔感染の検討では、ヨーグルトの毎日摂取が微生物の感染を防ぐ可能性が示唆された。