2018/05/15

Vol.166 (3) トピックス 「この違い、説明できますか?-プロバイオティクス・プレバイオティクス・シンバイオティクス」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.166

「この違い、説明できますか?―プロバイオティクス・プレバイオティクス・シンバイオティクス」

 近年、健康づくりにおける腸内環境の重要性に注目が集まっています。テレビ番組や雑誌などでも数多く取り上げられ、腸内細菌叢を表す「腸内フローラ」という言葉も周知されるようになりました。また、腸内環境を改善する機能性を持った食品の人気も高く、栄養指導などの現場で、対象者の関心事として腸内環境について質問を受けることも少なくないのではないでしょうか。
 そこで今回は、腸内環境改善のキーワードとも言える3つの用語「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」について解説します。

生きた菌を摂取するプロバイオティクス

 プロバイオティクス(probiotics)は、有害な病原細菌を抑制する「抗生物質(antibiotics)」に対して提唱された概念で、1989年、イギリスの微生物学者Fllerにより「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物」と定義されました。つまり、腸内環境を良くすることによって私たちの健康に役立つ微生物がプロバイオティクスです。プロバイオティクス食品として、生きた菌が含まれるヨーグルトなどの発酵乳、納豆などが挙げられます。

 なお、プロバイオティクスには次のような条件が求められます。

①安全であること
②ヒトの腸内フローラを構成する細菌であること
③胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達すること
④腸内で増殖できること
⑤ヒトに対して明らかに有用であること
⑥食品などの形で有効な菌数を維持できること
⑦取り扱いやすく安価であること
公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会ホームページより

 プロバイオティクスの効果として、便秘や下痢、乳糖不耐症の改善効果、免疫機能の改善による感染防御やアレルギーの抑制効果などが報告されています。

腸内細菌の餌になるプレバイオティクス

 一方、プレバイオティクス(prebiotics)は1994年にイギリスのGibsonとRoberfroidによって提唱された概念で、「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、宿主に有益に働く食品成分」と定義されています。つまり、プロバイオティクスが菌そのものの作用によって腸内環境を改善するのに対し、プレバイオティクスは有用な腸内細菌の餌となる食品成分を摂取することによって腸内環境を改善するということです。

プレバイオティクスには、次のような条件が求められており、オリゴ糖などがよく利用されています。

①消化管上部で分解、吸収されないこと
②大腸に共生するビフィズス菌などの有益な細菌の栄養源となり、それらの細菌の増殖を促進すること
③腸内フローラを健康的な構成に改善できること
④ヒトの健康に対し有益に作用すること
公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会ホームページより

双方を組み合わせたシンバイオティクス

 シンバイオティクス(synbiotics)は、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたもので、1995年にGibsonらによって提唱されました。腸内フローラのバランスを整える生きた菌であるプロバイオティクスと、腸内の有用な菌の餌となるプレバイオティクスを同時に摂取することで、より効果的に腸内環境を改善し、健康増進に役立つと考えられています。

 医療の現場では、感染防御や炎症抑制などにシンバイオティクスが応用されています。

参考
公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会 ホームページ
http://bifidus-fund.jp/index.shtml

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