第19回ダノン健康栄養フォーラムより
成長期のスポーツ栄養
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科 教授
鈴木 志保子 先生
文部科学省の学校保健統計によると、昭和36年度(祖父母世代)の子どもは、昭和61年度(親世代)、平成28年度(子世代)の子どもに比べて体格が小さいことが分かります。また、祖父母世代では、親世代や子世代に比べて発育のピークが遅く、そのピークが明確であることが分かります。つまり、親世代、子世代では発育・発達のピークを迎えるのが早く、また、その個人差も大きくなったということです。
体格が良い方が有利なスポーツは数多くあります。一方で、このデータからは、今のまま育てるのでは、今後子どもの体格はあまり変わらないのではないかということも考えられます。
子どもの発育・発達を支援するソフトの開発
順天堂大学女性スポーツ研究センターで、オリンピックや世界選手権に出た選手について解析したところ、高身長になった選手では、成長のスパート期に栄養状態が良く、身体活動量がほどほどで、睡眠の状態も良かったことが分かりました。また、育て方によっては予測される身長よりも2~3cm伸びるかもしれないというデータが得られました。これらの結果を社会に還元するため、「スラリちゃん、Height!」というソフトウェアを開発し、無料で配信しています。「スラリちゃん、Height!」に、身長や体重を入力していくと、成長のスパートの開始時期を教えてくれます。また、身長が伸びた時に正しい体重の伸びが見られない時には、中身が充実した状態で成長していないことを示すアラームが鳴り、子どもの発育・発達をしっかりと支援する仕組みになっています。
「スラリちゃん、Height!」は女子用ですが、男子用に「ヘルスメイト」というソフトウェアが無料で配信されています。ダウンロードしていただいて、子ども達の望ましい発育・発達の確認にご利用いただければと思います。
バランスの良い食事
補色、間食、おやつの違い
私は選手を育てる時、補食、間食、おやつを明確に区別するようにしています。1日3回の食事ではとりきれないエネルギーや栄養素がある場合には、補食をとることでそれらを補うことが必要です。食べる物は菓子類ではなく、食事として認められる物にします。また、寝ている時以外で、食事と食事の間隔が6時間以上あくときには間食を有効に使うと良いでしょう。1日の総量は変えずに間食分をやりくりするので、例えば夕食の時間が遅くなる場合には「夕食の一部を間食としてとり、その分を夕食から減らす」というように考えます。この場合も、菓子類ではなく食事として認められるものを食べるようにします。また、菓子類などのおやつは“心の栄養剤”と考えます。避ける必要はありませんが、お腹がすいたからと菓子類からエネルギーをとり、それをプレーに使うのは間違っているでしょう。
ジュニアアスリートの健全な育成のためには、栄養状態を良好に保つことが必要です。しかし、しっかり食べているというだけの認識で栄養状態を把握することは、やめていただきたいと思っています。1日3食の他に補食を食べていたとしても、栄養が不足していることがあるからです。栄養が不足すれば、低身長になったり、骨格が小さい状態になってしまったり、勉強がきちんとできなかったりなどのマイナス面を生み出すでしょう。「スラリちゃん、Height!」や「ヘルスメイト」などのツールも活用しながら、ジュニアアスリートが悔いなく発育・発達できるようにご協力いただければと思います。
- スラリちゃん、Height!(順天堂大学女性スポーツ研究センター)
http://www.juntendo.ac.jp/athletes/surari/
- ヘルスメイト(独立行政法人国立病院機構西別府病院)