メールマガジン「Nutrition News」 Vol.161
第19回ダノン健康栄養フォーラムより
乳幼児の栄養
帝京科学大学 教育人間科学部 幼児保育学科 学科長/教授
上田 玲子 先生
第19回ダノン健康栄養フォーラムより
乳幼児の栄養
帝京科学大学 教育人間科学部 幼児保育学科 学科長/教授
上田 玲子 先生
乳幼児期の大きな特徴は「成長すること」です。乳幼児期には、体の形態も機能も、未熟から成熟に向かって非常に短期間で変化していきます。そのため、栄養の考え方や方法もその変化に合わせて変えていく必要があります。
乳汁栄養から離乳食へ
新生児や乳児は、乳汁を飲むことによってエネルギーと栄養素を得て成長します。しかし、いつまでも乳汁だけで過ごすことはできません。母乳栄養の場合、母乳のみで育つことができるのは6か月頃までと言われています。母乳中の栄養成分が変化するためです。例えば、初乳を100%とした場合、300日後には、たんぱく質は約50%、鉄は約60%に減少します。そこで、母乳だけでは不足してくる栄養素を補うために加えていきたいのが離乳食です。
- 離乳とは、乳汁栄養から幼児食に移行する過程を言い、離乳食には「乳汁を吸う」から「食物を噛みつぶして飲み込む」という摂食機能の変化を促す役割もあります。そのため、離乳食では、摂食機能の発達に応じた調理形態にすることが重要です。
- 5~6か月(ゴックン期)5~6か月頃に離乳食を開始します。与える回数は、最初は1日1回、1か月ほど経ったら1日2回が目安です。この時期の赤ちゃんは舌を前後にしか動かせず、飲み込むことしかできません。また、完全に口を閉じることができず、サラサラとした液体では口から出てしまうため、ポタージュ状のとろみのあるものを与えます。練習していくうちに口が閉まるようになったら、ぽってりとしたプレーンヨーグルト状のものに変えていきます。
- 7~8か月(モグモグ期)7~8か月頃になると、離乳食の回数は1日2回になります。舌は上下にも動くようになります。舌の上に乗せた食べ物を上あごに押しつけるようにして食べるため、与える食べ物の硬さは、舌と上あごで容易につぶせるよう、絹ごし豆腐状にします。小指と親指で軽くつぶせるくらいの硬さを目安にすると良いでしょう。また、食べさせ方も重要です。平らなスプーンで食べ物を下唇に乗せ、上唇と下唇で挟み取らせることが、噛む力をつけることにつながります。
- 9~11か月(カミカミ期)9~11か月頃には、離乳食の回数は1日3回になります。この時期には、舌は前後・上下・左右に動くようになり、舌でつぶせない硬さの食べ物は歯茎でつぶして食べるようになります。食べ物は指くらいの太さ(モンキーバナナ状)に調整し、それを前歯で噛み取らせるようにします。こうすることによって、赤ちゃんは食べ物の硬さなどを学んでいくのです。
- 12~18か月(パクパク期)1歳になると1日3回の離乳食に、1~2回のおやつも加わってきます。舌は自由自在に動き、食べ物を前歯で噛み切れるようになります。この時期には、手づかみメニューを用意することが重要です。自分の手を使い、非常に敏感な歯である前歯で食べ物を噛み取る練習をすることによって、適切な一口量を覚えることができるためです。食べ物を噛み切る練習のためには、食べ物を円盤状に調整して、前歯で噛み切りやすくすると良いでしょう。なお、手づかみ食べは、食べ物の硬さや温度を感じたり、硬さを自分で調節したりするという意味でも重要です。食べ物を下に落としたり机でゴシゴシしたりすることは、遊びではなく学習です。十分にさせてあげる必要があります。
嗜好の発達と好き嫌い
小児期の前半(1~2歳)には、基本的な味覚能力の影響を受けて好き嫌いが出てきます。例えば、生まれたばかりの赤ちゃんでは、エネルギー源となる「甘味」やたんぱく質の存在を示す「うま味」など体に必要なものは喜び、腐敗を示す「酸味」や有毒物質であることを示す「苦味」など体に危険なものは嫌がるという原始反射があります。また、摂食機能に適応しないもの(噛んで食べにくいもの)を嫌がるため、この時期には味つけや食べやすさの工夫をすることが大切です。 小児期の後半(3歳以上)は、学習による発達展開期です。脳が発達し、好奇心や知識、競争心などから、嫌いな食べ物への受け入れ体制が整ってきます。多方面から食に対する働きかけをすることで、食べられるものが増えていく時期です。
また、苦手だったものが食べられるようになったきっかけを調べてみると、「好奇心」が47%と最も多くなっています。好奇心を引き出すような環境を作ることはとても重要です。次に多いのが「大人のまね」で17%です。一緒に食べる「共食」は、子どもにとっては「お母さんが食べているから大丈夫」という安全情報でもあります。このような学習によって味覚が発達し、様々な味を受け入れられるようになるのです。
好き嫌いを克服するには、ある程度の期間も必要です。食べられなかった食品が食べられるようになった年齢を見てみると、にんじん、納豆、たまねぎ、ピーマンでは平均10.2歳、80%通過率は15歳です。わさび、しょうが、コーヒーなどは平均14.6歳、80%通過率は17.2歳です。「子どもの好き嫌いを早くなくしたい」と考える方は多いですが、食環境を整えて気長に見守るということも大事なのではないでしょうか。
こちらの講演ダイジェストをご覧になりたい方は、以下のリンクページをクリックして下さい。
▽第19回ダノン健康栄養フォーラムの概要は、以下をご覧ください↓