メールマガジン「Nutrition News」Vol.257 2025年4月1日発行
健康・栄養に関する学術情報
「朝ごはんをしっかり食べて、一日を好スタート!!」
一日の活動エネルギーを供給してくれるのは食事ですね。通常は3食を朝、昼、晩に食べることが多いです。3回の食事の中で、一番大事なのは朝食とされているのをご存じでしたか?「朝はバタバタ忙しくて」とか「もう少し寝ていたい」と欠食してしまうこともありがちですが、朝食は体に目覚めを与えてくることが分かっています。加藤秀夫らが自らの研究成果を中心にまとめた総説「健康と生活習慣病予防における時栄養学の役割」から抜粋して紹介します。
朝食は、一日をスタートするためにどんなことをしてくれるのでしょうか?
はじめに
体のリズムが一旦形成されると、急激な環境変化があっても数日間は維持されるが、不規則な生活を繰り返すと体調を崩す。1日3食の規則正しい食生活は、体調を整える体内時計の維持に重要である。しかし、生体リズムの形成に摂食サイクルと明暗サイクルのいずれが不可欠であるかはほとんど不明であり、それを明らかにすることが必要と考えられる。
生体リズムと摂食行動
入院患者の血中コルチゾール(副腎皮質ホルモン)のリズムを調べたところ、経口的に食物を摂取している場合は、夕方から夜半にかけて低く朝方に高値を示した。経腸栄養法で栄養液を午前7時から午後11時までの16時間投与する周期投与ではリズムが維持されたが、1日中継続的に投与すると、1日中ほぼ一定となり日内リズムが消失した。また、中心静脈栄養では24時間連続投与だけでなく日中高濃度・低濃度の傾斜投与でもリズムが消失した。
血中副腎皮質ホルモンのリズム形成には、消化管を経由した規則正しい食事摂取が不可欠であり、そのリズムは明暗周期より摂食周期に依存していることが考えられる。また、ヒト体温の日内リズムでも血中副腎皮質ホルモンの日内リズムと同様の結果が認められている。
摂食パターンとエネルギー消費
1日で消費するエネルギーの大半は、生命活動を維持するための基礎代謝で占められ、活動代謝と摂食に伴う食事誘発性熱産生に分けられる。
食事誘発性熱産生は適正な体温上昇を促し、体脂肪の燃焼だけでなく免疫力の増進にも関係している。
健康な若年女性を対象とし、摂食パターンによるエネルギー消費への影響を検討した。
量を「少なめ(400kcal)」「ふつう(600kcal)」「多め(800kcal)」とした同一メニューの食事を、1日の総エネルギー摂取量は同じとなるように朝・昼・夕で組み合わせた摂食パターンを設けた。
食事誘発性熱産生は、摂食量に関わらず朝食では上昇しやすく、同じ摂食量で比べると、朝食は夕食よりも高い値を示した。
エネルギー消費量は、朝食後から昼食前にかけて低下していき、「朝少なめ」では朝食前レベルまで低下した。
「朝ふつう」と「朝多め」では、朝食前よりも高かった。朝食を摂食しても摂食量が少ない場合、午前中のエネルギー消費量を賄うことができない。
朝食を欠食せず適度な量を摂取することが、朝から夕にかけて高くなるエネルギー消費の日内リズムに必要である。
食事摂取のタイミング
血中副腎皮質ホルモンの日内リズムは朝にピークを示し、燃料切れの体全体にエネルギーを産生する準備を整える。そのタイミングで食事をすると脳の働きや活動力を高めることができる。
朝食の欠食習慣は基礎代謝と体温の低下につながり、肥満も朝食欠食者に多いことが知られている。
朝食は、体温やホルモン分泌のリズム形成において不可欠であるため、1日3回の食事で重視される。
さらに朝食・昼食・夕食・夜食それぞれについて考慮すべき事項、スポーツ・運動の時間栄養学や血圧と食塩摂取についての知見や考察についても述べられています。
以上が本論文の抜粋・紹介ですが、私たちは一日の活動を終えて夕食をいただき、眠ります。翌朝まで体を休めるのと同時に食事を摂るのも中断します。長時間の空腹を経た後に食べる朝食は、breakfast=空腹(fast)を断ち切る(break)という意味があるのです。
朝食は午前中の活動エネルギーを与えてくれるだけでなく、明るい朝日や目覚まし時計、あるいは家族が「おはよう」と言ってくれるように、一日を元気にスタートできるよう背中を押してくれるのですね。
いただきます!!行ってきます!!
詳細は下記論文をご参照下さい。
加藤秀夫,花田玲子,山田和歌子,出口香奈絵. 健康と生活習慣病予防における時間栄養学の役割.脂質栄養学 2017. 26 (1); 35-45.
本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/26/1/26_35/_article/-char/ja