2024/10/01

Vol.251 (3) 健康・栄養に関する学術情報 「「共食行動」と健康・栄養状態との関連  だれかと一緒に「いただきます!!!」」

メールマガジン「Nutrition News」Vol.251  2024年10月1日発行
健康・栄養に関する学術情報
「「共食行動」と健康・栄養との関連
だれかと一緒に「いただきます!!!」」

食事で栄養を摂ると体は元気になります。美味しいものを食べた満足感も感じられます。それだけでなく、だれかと一緒に食べると、より一層心豊かに感じることはありませんか?こんな素朴な疑問に答えてくれる研究があります。だれかと一緒に食事する「共食行動」と健康・栄養状態との関連を調べた會退友美・衛藤久美による文献レビュー「共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連」では、共食行動と精神状態との関連を示しています。どんなことが分かったのでしょうか?

著者らは検索語「共食、孤食、家族、一緒、食事」を用いた文献検索、およびハンドサーチで選択した文献についてレビューを行いました。

採択論文20件の分析を行った結果、共食頻度と良好な精神的健康状態に正の関連がみられたほか、健康的な食品の摂取頻度、よい食事内容、食事の質との関連などを認めています。

今回は、その内で精神的健康状態に関する7件を取り上げて紹介します。

精神的健康状態に関する採択論文

著者らは、「学童・思春期の子どもと家族が食事を共にし、会話を交わすことによって、家族の関係性が良好となり、精神的な健康状態がよくなる可能性がある。成人でも家族との共食行動と精神的健康状態との間に正の関連がみられた。成人期以降のライフステージにおいても家族との共食行動が精神的に良好な役割を果たすことについてさらに検討を重ねる必要がある。」としています。

だれかと一緒に食事をすると心豊かにいられるということが、多くの人で共通するのですね。この研究では、小学生から大人までの幅広い年齢層で、家族と共にまたは離れて生活する、というように様々なライフステージでの検討をまとめています。この研究の対象でなかった高齢者でも、フレイルが社会課題となる中で、身体的フレイルには食事・栄養で、精神的・社会的フレイルには共食で、何か良いことができそうです。

様々な理由で、一人で食事をしなければならないこともあるでしょう。そんな中でも、時には家族や友人と一緒に「いただきます。」すると、心も嬉しいのですね。今夜の食事で家族にどんなことを話そうかなと考えると、気持ちがほわっと温かくなるような気がしました。


ダノンジャパン株式会社 研究開発部 西田 聡






上記の精神的健康状態に関する採択論文

  1. 井上節子ほか.QOL に影響する食生活因子とその効果.日本未病システム学会誌.2010; 16: 228-237.
  2. 川崎末美.食事の質,共食頻度,および食卓の雰囲気が中学生の心の健康に及ぼす影響.日本家政学会誌.2001; 52: 923-935.
  3. 小西史子ほか.子どもの食生活と精神的な健康状態の日中比較(第一報)食事状況と精神的な状態の関連.小児保健研究.2001; 60: 739-748.
  4. 小西史子.「朝食の孤食頻度」,「夕食の楽しさ」,「家族満足度」ならびに「学校適応感」が中学生の「主観的健康観」に及ぼす影響.日本健康教育学会誌.2003; 11: 1-11.
  5. 辻本洋子ほか.小学生の食生活と健康状態や学習態度との関連性.大阪教育大学紀要.2009; 58: 15-26.
  6. 冨永美穂子ほか.中・高生および大学生の食生活を中心とした生活習慣と精神的健康度の関係.日本家政学会誌.2001; 52: 499-510.
  7. 野津山希.女子大学生の過去および現在の夕食形態とコミュニケーションスキル,ストレス,孤独感との関連性.福山大学人間文化学部紀要.2010; 10: 87-96.

(参考)

詳細は下記論文をご参照下さい。

會退友美・衛藤久美. 共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連―国内文献データベースとハンドサーチを用いた文献レビュー―. 日健教誌 2015; 23 (4): 279-289.

本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/23/4/23_279/_pdf

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