2017/08/15

Vol.157 (3) 健康・栄養に関する学術情報 「寝たきりや無重力によるサルコペニアを食品由来ペプチドで防止することが可能に?」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.157
健康・栄養に関する学術情報
寝たきりや無重力によるサルコペニアを食品由来ペプチドで防止することが可能に?
 いわゆる「ルーの三原則」の一つに「筋肉は 使わないと萎縮する」とあります。高齢化の進む我が国においては寝たきりや加齢に伴う筋委縮(サルコペニア)が大きな問題となっています。また、宇宙開発が進む中で無重力環境に長期滞在する場合にも同様の問題が起きます。これらの廃用性筋委縮の場合に筋タンパク質の合成の減少と分解の亢進が起こっていますが、詳細なメカニズムは不明でした。

 今回は、その詳細なメカニズムおよび筋委縮を抑える食品成分についての研究総説論文を紹介します。
 

(内容)
 宇宙フライトをしたラットを用いた研究により、無重力環境では筋肉の成長と修復に最も重要な因子と言われているinsulin-like growth factor-1 ( IGF-1)シグナル伝達に関連したタンパク質の一つであるinsulin receptor substrate-1 (IRS-1)に対するユビキチンリガーゼCBl-bの発現が増大することでIRS-1のユビキチン化が進むことが分かった。それによりIRS-1が特異的タンパク質分解系であるユビキチンプロテアソーム系により分解される。その結果、IGF-1シグナル伝達が低下することにより、筋タンパク質合成が低下し、同時に筋タンパク質分解が亢進することが明らかになった。

更に、ユビキチンリガーゼCBl-bIRS-1の特定部位を認識してユビキチン化するので、各種ペプチドよりIRS-1のユビキチン化を阻害するものを探索した。その結果5個のアミノ酸からなるペプチドCblinを発見し、それと類似の大豆由来ペプチドのヒトへの効果も検討した。また、このペプチド配列を組み込んだ米を作製し、動物実験で効果の検討を行っている。今後、ペプチドの体内代謝などを検討するとしている。

参考

詳細は下記論文をご参照下さい。

二川 健 「寝たきりや無重力による筋委縮のメカニズム解明とその栄養学的治療法の開発」
 日本栄養・食糧学会誌 Vol. 70, No.1 : 3-8, 2017

本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/70/1/70_3/_pdf

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