「令和6年スタートの健康日本21(第三次)、その内容は?(1)」
令和5年5月、厚生労働省は、令和6年度から始まる「健康日本 21(第三次)」を推進するための基本方針を改正し、公表しました。
国民健康づくり対策
わが国では、健康増進の取組である「国民健康づくり対策」が、昭和53年(1978年)から数次にわたって展開されてきました。その中で「健康日本21」は、今から23年前の平成12年(2000年)に、第3次国民健康づくり対策として開始されたものです。健康日本21は、「栄養・食生活」「身体活動・運動」「休養・こころの健康づくり」などの様々な健康課題について達成すべき数値目標を掲げて取組を推進することで、国民の健康寿命の延伸を図ることを目的としています。
これまでの国民健康づくり対策
平成25年度からは、健康日本21の取り組み結果を踏まえた「健康日本21(第二次)」が始まりました。健康日本21(第二次)では、次の5つを基本的な方向とし、全53項目の具体的な目標値が定められました。
健康日本21(第二次)の基本的な方向
- ① 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
- ② 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCDの予防)
- ③ 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
- ④ 健康を支え、守るための社会環境の整備
- ⑤ 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善
第5次国民健康づくり対策「健康日本21(第三次)」
令和4年には、健康日本21(第二次)の成果がとりまとめられましたが、健康日本21の主目標である健康寿命が着実に延伸している一方で、主に一次予防に関連する指標で悪化が見られることや、一部の性・年代で悪化している指標があることなど課題も指摘されています。また、社会情勢に目を向けてみても、少子化・高齢化による総人口・生産年齢人口の減少、独居世帯の増加、女性の社会進出、多様な働き方の広まり、あらゆる分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、次なる新興感染症も見据えた新しい生活様式への対応の進展など、今後様々な変化が起こることが予想されています。
これらを踏まえ、健康日本21(第三次)では「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンとし、その実現のための基本的な方向が定められました。
健康日本21(第三次)の基本的な方向
- ① 健康寿命の延伸・健康格差の縮小
全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現のため、個人の行動と健康状態の改善に加え、個人を取り巻く社会環境整備や、その質の向上を通じて健康寿命の延伸及び健康格差の縮小を実現する。
- ② 個人の行動と健康状態の改善
がん、生活習慣病の発症予防や重症化予防の取組を引き続き推進する一方で、ロコモティブシンドローム、やせ、メンタル面の不調など、生活習慣病に起因せず日常生活に支障を来す状態となることもあることなどから、生活習慣病の発症予防・重症化予防だけでなく、生活機能の維持・向上の観点も踏まえた取組を推進する。
- ③ 社会環境の質の向上
各人がより緩やかな関係性も含んだつながりを持つことができる環境整備や、こころの健康を守るための環境整備を行う。また、自然に健康になれる環境づくりを行い、健康無関心層を含めた幅広い予防・健康づくりを推進する。さらに、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)※など自らの健康情報を入手できるインフラ整備、科学的根拠に基づく健康情報を入手・活用できる基盤の構築や周知啓発を行うとともに、多様な主体が健康づくりに取り組むよう促す。
※PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)…個人の健康・医療・介護に関するデータ
- ④ ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり
現在の健康状態がこれまでの生活習慣や社会環境等の影響を受ける可能性や次世代の健康にも影響を及ぼす可能性があることを踏まえ、ライフステージに応じた健康づくりの取組に加え、ライフコースアプローチ(胎児期から高齢期に至るまでの人の生涯を経時的に捉えた健康づくり)の取組を推進する。
健康日本21(第三次)の概念図
厚生労働省資料より
次回のトピックスでは、上記を踏まえた具体的な数値目標などについてお伝えします。
参考
健康日本21(第三次)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html