「抗酸化ビタミン・抗酸化物質の働きとは?」
日本では13種類のビタミン(水溶性9種類、脂溶性4種類)について摂取基準が策定されています。これらは欠乏症の解消以外にもいろいろな働きをおこないますが、その中には抗酸化作用をもつものがあります。代表的なものとしてビタミンA、ビタミンC、ビタミンEがあり、併せてビタミンACE(エース)と呼ばれています。今回はこれらの抗酸化ビタミンや食品中の抗酸化物質が体内の抗酸化機能や健康維持にどのように働いているのかを纏めた論文を紹介します。
私たちの体では酸素を利用してエネルギー産生をしていますが、一部の酸素はスーパーオキサイド、ドロキシラジカル、過酸化水素、パーオキシナイトライトなど反応性の高い物質を生み出し、組織に障害を与えます。一方、健康な体内では、過剰な活性酸素や過酸化脂質が生じても、種々の抗酸化酵素・抗酸化物質が、抗酸化ネットワークを形成して活性酸素を処理して、「酸化促進」系と「抗酸化」系のバランスを保っています。
しかし、現代社会では、様々な要因で抗酸化ネットワークが壊れて生体のホメオスタシスが乱れ、種々の不調・疾病を引き起こすリスクが高くなっています。乱す要因としては、細菌・ウィルス感染、環境汚染物質、過度のストレスなどの体外要因に加え、栄養不足に由来する抗酸化機能の低下などの体内要因もあります。
「抗酸化」系が関わる代表的な体の機能として、免疫機能、 脳の健康(アルツハイマー病など)、 歯の健康(歯周病など)、 心臓の健康(動脈硬化など)、 肝臓の健康(肝炎など)、 その他の疾患(フレイル、がんなど)などがあります。抗酸化ビタミンに加え抗酸化作用を持つ食品成分(植物ポリフェノールなど)をバランスよく摂取することで、不調・疾患を予防することが期待されます。
詳細は下記論文をご参照下さい。
阿部皓一
「抗酸化ビタミンのヒト研究の最新情報 –酸化ストレスに対する抗酸化ビタミンの働き–」
化学と生物 Vol. 59, No. 12, 612-621, 2021
本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://katosei.jsbba.or.jp/download_pdf.php?aid=1504