2023/01/13

Vol.230 (2) 第24回ダノン健康栄養フォーラムより 「人と地球の健康を支える管理栄養士・栄養士(前編)」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.230
第24回ダノン健康栄養フォーラムより
人と地球の健康を支える管理栄養士・栄養士(前編)

兵庫県 保健医療部 健康増進課 
諸岡 歩 

 

 日本の食料自給率は約4割と、諸外国と比較しても低くなっています。食料の生産地から食卓までの距離が長いほど輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が多くなるため、海外から多くの食料を輸入している日本は、食料の消費そのものが環境に対して大きな負荷を与えています。それにもかかわらず、日本では多くの食料が捨てられており、その量を国民一人あたりに換算すると、毎日茶碗1杯分の食料を捨てていることになります。食品ロスは、廃棄した食料の運搬・焼却の際に余分な二酸化炭素を排出するなど、環境面の問題も引き起こします。日本の食は健康的で栄養価が高いといわれますが、サプライチェーンを含めた全体像を見てみると、決してサステナブルとはいえないのが現状です。

 海に囲まれた南北に長い列島である日本は、その土地ごとの多彩な食材や食文化があり、地産地消を実践しやすい国といえます。旬の食材は、生産に必要なエネルギーが少ないことに加えて栄養価も高く、自然の生態系とのバランスをとってくれるため、心と体にやさしい食材でもあります。また、みそや漬物などの発酵食品、削り節やこんぶ、高野豆腐などの保存食品には、栄養価やおいしさを増すはたらきがあるだけではなく、食材を無駄なくおいしく活用して食べる技術があります。和食は“食文化の継承”だけではなく、食料廃棄を減らしフードロスの削減にも役立つ「サステナブルな食べ方」だといえるでしょう。

 厚生労働省では、「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」を立ち上げ、産学官等関係者の連携のもと、誰もが自然に健康になれる食環境づくりを推進しています。「食塩の過剰摂取」を優先課題とし、「若年女性のやせ」「経済格差に伴う栄養格差」についても取り組むこととしています。「栄養・食生活」と「環境」の相互作用性を踏まえ、事業者が行う環境保全に資する取組にも焦点を当てるというところも重要なポイントです。

 また、健康・栄養だけでなく環境の視点も取り入れたフードガイドの策定に向けた検討が農林水産省において行われている他、環境に配慮した買い物がポイントになるアプリ、食品の賞味期限を管理するアプリなど、サステナブルな取り組みを後押しするツールも徐々に増えてきています。

 サステナブルな食生活のためには、個人はもちろん、学校、企業、地域団体、農林漁業・食品関連事業者などそれぞれがタッグを組んで取り組むことが重要です。その中で管理栄養士・栄養士の役割として、生産、流通、加工、消費という食の流れ全体を総合的かつ科学的に捉え、地域の食文化の伝承などサステナブルな視点をもって、健康で幸せな食生活をデザインすることや、「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」の動きにも関心を持ち、社会環境からのサステナブルな食生活をデザインすることなどが挙げられます。自分の暮らし、住んでいる地域、そして地球。これらを一続きに捉えていくという“発想の転換”こそが、人と地球の健康を支える管理栄養士・栄養士に求められているのだと思います。

 

講演ダイジェスト動画


▽第24回ダノン健康栄養フォーラムの概要は、以下をご覧ください↓

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