「おいしい健康習慣―チョコレートが脳卒中を予防する?」
そのような中、チョコレートが疾病予防に寄与する可能性を示す新たな研究結果が、国立がん研究センターの研究チームによって報告されました(Atherosclerosis 2017;260:8-12)。
チョコレートの摂取量と脳卒中発症との関連
この研究は、平成7年と平成10年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久などの9保健所管内在住の男女約8.5万人(アンケート回答時年齢:44~76歳)を、平成22年まで追跡調査した結果に基づいたものです。 研究対象となった男女84,597人のうち、追跡期間中に脳卒中を発症したのは3,558人でした(内、脳梗塞2,146人、脳出血1,396人、不明16人)。アンケート調査の結果からチョコレート摂取量を算出し、摂取量ごとに4つのグループに分け、チョコレート摂取量が最も少ないグループ(中央値0g/週)と比較して、その他のグループ(中央値5.8g/週、11.6g/週、37.5g/週)で脳卒中発症リスクが何倍になるかを調べました。なお、分析にあたっては、脳卒中発症に影響を与える他の要因が結果に影響しないよう調整を行っています。
女性ではチョコレート摂取量が多いグループで脳卒中リスクが低下
その結果、女性ではチョコレートの摂取量が最も多いグループで、脳卒中のリスクが16%低いという結果となりました。男性では、チョコレート摂取量と脳卒中発症との関連は見られませんでした(図)。
図1 チョコレート摂取と脳卒中発症リスク
国立研究開発法人国立がん研究センターホームページを元に作成
この研究で、日本人の女性ではチョコレートの摂取が脳卒中の発症リスクを低下させる可能性が示されました。これは、ポリフェノールの摂取による血圧低下作用、動脈硬化抑制効果、血栓の形成や炎症の抑制作用などが脳卒中発症に予防的に作用しているものと考えられます。
なお、この研究では上記のような結果が見られましたが、チョコレート摂取と脳卒中の関連について調べた研究はまだ多くなく、結果も一致していないことから、研究チームは「今後のさらなる研究結果の蓄積が必要」としています。
チョコレートでおいしく健康に
日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると、ミルクチョコレート100gあたりのエネルギーは558kcal、脂質は34.1g、炭水化物は55.8gです。カカオポリフェノールによる様々な健康効果が期待できる一方で、チョコレートは脂質や糖を多く含む高エネルギーな食品でもあります。全体の食生活を考慮した上で適度にチョコレートを摂取し、その機能性を“おいしく”取り入れたいものです。
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