「不規則な生活で循環器疾患のリスクが高まる!?」
私たちのからだには、地球の自転による明暗の周期に同調して体内の環境を変化させる“体内時計”と呼ばれる仕組みがあり、体温やホルモン分泌などからだの基本的な機能は約24時間のリズム(概日リズム)を示すことが知られています。近年、概日リズムのずれが様々な疾患のリスクを高めることが報告されており、2007年には国際がん研究機関(IARC)が、「概日リズムを乱す交代制勤務」の発がん性を、ヒトに対しておそらく発がん性があるとする「グループ2A」に分類しています。
そのような中、生活習慣と疾病との関係を明らかにするための研究を行っている国立がん研究センターの研究チームが、毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連を調べた結果を公表しました(Sci Rep. 2022 Sep 21;12(1):15750. doi: 10.1038/s41598-022-20019-8.)。
女性では毎日の生活が不規則だと循環器疾患の発症リスクが高い
この研究は、平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に全国9つの保健所管内に住んでいた40~69歳の方のうち、調査開始5年後に行ったアンケート調査に回答し、さらにその時点で循環器疾患やがんの既往歴がなかった約7万8千人を追跡調査したものです。
毎日の生活について「規則的」と回答したグループを基準とし、「不規則」と回答したグループのその後の循環器疾患発症のハザード比を算出したところ、男性では毎日の生活の不規則さと循環器疾患の発症との間に有意な関連はみられませんでしたが、女性では有意な正の関連がみられ、毎日の生活が不規則であると循環器疾患のリスクが高いことが示唆されました。なお、循環器疾患の発症によって生活の規則性が変化することの影響を除くために、調査開始後3年以内の発症を除いた解析においても、同様の結果となりました。
毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連
国立がん研究センターがん対策研究所による多目的コホート研究ホームページより
野菜・果物摂取量別の関連性は?
中には、規則的な生活を送りたくてもそれが困難な人もいます。しかし、日常生活の中で“食事”は比較的自分で変えやすく、特に野菜・果物の摂取は循環器疾患のリスクとの関連が報告されていることから、この研究では、毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連が野菜・果物の摂取量によって異なるかどうかについても検討されました。
対象者を「野菜・果物の摂取量が多いグループ」と「野菜・果物の摂取量が少ないグループ」に分けて解析を行ったところ、野菜・果物摂取量が少なく、かつ毎日の生活が不規則である場合、男性では全循環器疾患のリスクが、女性では全循環器疾患および脳卒中のリスクが高いという結果が得られました。
毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連:野菜・果物摂取量による層別化
国立がん研究センターがん対策研究所による多目的コホート研究ホームページより
研究チームは、今回の研究の限界として、追跡期間中に起こりうる生活の不規則さの変化を考慮できていないこと、生活の不規則さの把握方法が自己申告によるものであり、妥当性が十分に確認されたものではないこと、未測定の交絡因子の影響を除き切れていない可能性があることなどを挙げており「今回の結果を確かめるにはさらなる研究が必要」としています。
研究結果の詳細は下記をご参照下さい。
多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告「毎日の生活の不規則さと循環器疾患との関連について」(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所)