健康・栄養に関する学術情報
いつ食べるのが良いですか?時間栄養学の視点から【前編】
お腹がすいたらご飯を食べますよね。毎日決まった時間に朝・昼・夕食を食べる方、食べるタイミングがまちまちな方、欠食することもある方、様々でしょう。
食べるタイミングによって健康への好影響・悪影響が現れることが知られています。食べるタイミングと健康への影響を調べる「時間栄養学」では、日頃何気なく食べている食事について「いつ食べるのが良いか?」という疑問を解き明かします。金および柴田による総説「時間栄養学」より2回に分けて、前編で肥満・糖尿病への影響、後編でスポーツパフォーマンス・腸内細菌への影響を紹介します。
筆者は、時間栄養学を次のように概説しています。
ヒトを含む哺乳類の生理機能の多くに、概日リズムが存在する。約24時間の周期で発生する周期的な内因性プロセスであり、体内時計によって生み出される。体内時計は栄養素の消化・吸収や代謝の日内変動を制御していることが知られており、食事・栄養と体内時計は相互関係にある。
いつ食べるかについての議論は人類の歴史に組み込まれている。古代ギリシャ時代の医師ヒポクラテス(紀元前460〜377年)によって強調されていたように、規則正しい食事をすることの重要性は早くから認識されていた。
続いて、研究から分かっていることを解説しています。
①肥満
- マウスに高脂肪食を与えて体重増加を観察した。1日の活動前期(朝食)に高脂肪食を多く摂取すると、活動後期(夕食)での摂取と比較して、体重増加が抑制された。
- 肥満女性で摂取カロリー制限を12週間行った。夕食の摂取カロリーを制限すると朝食での制限と比較して、体重・腹囲がより減少した。
- 定期的に朝食を摂取した人に対してそうでない人の肥満リスクは5倍も高い。
- 筆者らは朝食時と夕食時の血液中の代謝動態についてヒューマンメタボロームを用いて網羅的に比較検討し、解糖系、TCA サイクル、アミノ酸代謝が朝食時に高いことを示唆している。特に高炭水化物を摂取した場合、グルコース代謝に近い解糖系やTCA サイクルに関する経路で著しい違いが示された。この結果は、夕食時には朝食時と比べて糖代謝およびアミノ酸代謝が低下し、夕食後の糖代謝低下に関与している可能性を示している。
②糖尿病(高血糖)
- 朝食の欠食はインスリン分泌量および速度の低下をもたらし、1日を通して血中遊離脂肪酸濃度を高めるだけでなく、昼食後および夕食後の血糖値上昇が糖尿病患者に限らず引き起こされた。
- 6日間の朝食欠食における24時間のエネルギー代謝および血糖値コントロールに及ぼす影響について検討を行った。朝食欠食の初日から昼食後の血糖値の上昇、6日目には朝食を食べた場合と比較して24 時間の平均血糖値が高くなった。
- 1日に摂取するエネルギー量を揃えた上で朝食欠食の検討を行った。朝食欠食により1日の血糖値濃度が高く、昼食後の血糖値も大きく上昇し、夕食後の血糖値の低下が遅れた。
一貫して、朝食の欠食は代謝に大きな影響を及ぼし、脂質代謝異常や高血糖を引き起こすリスクを高める可能性があることを示しています。
参考
詳細は下記論文をご参照下さい。
金 鉉基,柴田 重信. 時間栄養学. 体力科学 2020; 69 (5) : 401-411. DOI:10.7600/jspfsm.69.401
本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/69/5/69_401/_pdf/-char/ja
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