2022/05/13

Vol.222 (3) トピックス 「食育に“デジタル”を導入するためのガイドブックが公表」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.222
「食育に“デジタル”を導入するためのガイドブックが公表」

 日本では2000年のIT基本法制定以降、様々な国家戦略を掲げて社会全体のデジタル化が進められてきました。しかし、デジタルインフラが整備され、個人向けサービスにおけるデジタルの利活用が進んだ一方で、企業におけるICTの活用や公的分野のデジタル化は十分に進んでいるとは言えず、日本は“デジタル後進国”と言われることもあるのが現状です。国際経営開発研究所が公表している「デジタル競争力ランキング」においても、日本の順位はここ数年低下傾向にあり、2020年の結果では63の国や地域の中で27位(前年比-4位)と低迷しています。  

出典:情報通信白書令和3年版(総務省)

 そのような中、新型コロナウイルスが流行し、外出自粛や3密(密閉・密集・密接)の回避が奨励されるようになりました。国民生活に大きな制約が生じる中、デジタルを利用した“非接触”“非対面”の活動で感染拡大防止と従来の生活・経済の維持が両立できることから、デジタル化は様々な分野で急速かつ強制的に進み、テレワークやオンライン授業も一般化しました。
 食育の分野においてもデジタル化は喫緊の課題であり、2021年度からスタートした第四次食育推進基本計画においても、横断的な重点事項の1つとして「デジタル技術を活用した食育の推進」が挙げられました。しかし、食育に取り組む方の中には、デジタルを活用した食育に興味はあるけれど具体的にどうすればよいのか分からないなどの問題を抱えている方も多いと考えられます。そこで、農林水産省は2022年4月に、デジタル技術を活用した食育に取り組むためのヒントをまとめた「デジタル食育ガイドブック」を公表しました。
         

デジタル食育の方法がわかりやすく示されたガイドブック

 ガイドブックには、デジタル技術を活用して行う食育(以下、「デジタル食育」)の代表的なものとして「オンライン食育イベント」「食育動画」「SNSを活用した食育活動」「アプリを活用した食育活動」について、実践方法の例が紹介されています。中でも「オンライン食育イベント」や「食育動画」については、企画から事後フォローまでの流れや各段階で行うべきタスク、よくあるトラブルや留意すべき点などが実証体験レポートとともに詳細に示されており、初めて取り組む方でも具体的なイメージをもって実践できるような内容になっています。
 また、実際にデジタル食育に取り組んでいる団体等の事例も紹介されており、当財団のオンライン食育セミナーおよび子ども向け・大人向けクッキング動画の事例も掲載されました。

出典:デジタル食育ガイドブック(農林水産省)

 時間や場所の制約を受けずに活動でき、且つ幅広い多くの対象者とコミュニケーションを図ることができるデジタル食育は、社会のデジタル化やウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えた食育の在り方として必要不可欠なものとなるでしょう。一方で、農林漁業体験等の“リアルな体験”には、五感を活かした体験ができるなど、デジタル食育では得にくいメリットがあるのも事実です。また、デジタル食育においては、対象者のITリテラシーやネット環境、著作権や肖像権の問題など、配慮すべき点も多くあります。ガイドブックなども参考に、これらの課題をうまくクリアした食育活動が広く推進されることが期待されています。

参考

情報通信白書令和3年版(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/index.html

デジタル食育ガイドブック(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/network/movie/index.html

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