健康・栄養に関する学術情報
よく眠れていますか?ー牛乳・乳製品の睡眠への効果のシステマティックレビューによる評価
みなさん、よく眠れていますか?よく眠れないと次の日の体調に悪影響が出るばかりか、続くと病気の原因になったりもします。2015年(1)と2017年(2)の日本政府による国民健康栄養調査で、健康的な生活をする上での懸念として取り上げられています。2017年の調査ではおよそ20%の人が睡眠で十分に休養がとれていないことが分かりました。「就寝前にホットミルクを飲むと眠りが・・・」という話も耳にします。さて、牛乳・乳製品を摂取するとよく眠れるようになるのでしょうか?システマティックレビューの手法を用いてこの問いを深堀りした報告文を紹介します。
このシステマティックレビューでは(3)、これまでに報告された牛乳・乳製品の睡眠の質に対する効果を、地域、摂取量、対象者(年齢、性別、人種)、研究デザインの差異を考慮に入れ、統合しました。既存の研究報告をmilk、yogurt、dairy product、cheese、sleep、human、observational study、interventional studyといったキーワードを用い、データベースから検索しました。該当する内容で1972年から2019年にかけて報告された研究論文が14報見つかり、そのうち無作為化比較試験が8件、クロスオーバー試験が2件、縦断研究が1件、横断研究が3件でした。高齢者を対象とした研究が4件、幼児が2件、残り6件は大学生を含めた成人が対象でした。
全体的に、牛乳・乳製品を含めたバランスのよい食事をすると、睡眠の質を高めるのに有効だということが示されましたが、対象者や方法といった研究特性の差異が大きく異なるため、結果にもばらつきが見られました(下表参照)。著者は、よい睡眠の質を維持するには、食習慣も含めた生活習慣全体を考えることが大切だと結んでいます。
メールマガジンVol.215(3)で、「多様性に富む食事は認知機能の低下を防ぐ」と題したトピックをお届けしました。日本の食事パターンを見ると、牛乳・乳製品を摂取しない人および摂取頻度が低い人の割合は高く、そのような人が牛乳・乳製品を習慣的に食べるとバランスのよい多様性に富む食事に少しプラスになりますね。また、睡眠と認知機能はともに脳の働きであり、多様に食べることで脳は喜ぶのでしょうか。今後も注目していきたいです。
参考
(1) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000142359.html
(2) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html
(3) Komada Y, Okajima I, Kuwata T. The Effects of Milk and Dairy Products on Sleep: A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2020 Dec 16;17(24):9440. doi: 10.3390/ijerph17249440. PMID: 33339284; PMCID: PMC7766425.