2021/10/15

Vol.215 (2) 2019年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告 「閉経後女性の動脈スティフネスに対する大豆イソフラボン代謝産物エクオールの影響 ―腸内細菌叢に着目して―」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.215
2019年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
閉経後女性の動脈スティフネスに対する大豆イソフラボン代謝産物エクオールの影響
ー腸内細菌叢に着目してー
国立国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部

東泉 裕子 先生

要旨

動脈硬化の原因として、生活習慣や加齢が上げられるが、女性において閉経は動脈硬化の大きなリスクのひとつである。大豆イソフフラボンは弱いエストロゲン様作用をもつことが示唆されており、腸内細菌叢を介して産生された大豆イソフラボンの代謝産物であるエクオールは、大豆イソフラボンよりも強い生理活性をもち、血管に対してもより強い保護作用があることが報告されている。しかしながら、すべてのヒトがエクオールを産生できるわけではなく、特定の腸内細菌叢をもったヒトのみがエクオールを産生することができる。腸内細菌叢を改善するプレ及びプロバイオティクスの摂取等、食生活の改善により腸内細菌叢やエクオール産生能を改善することが可能となれば、動脈硬化症をはじめとする生活習慣病の予防につながるとともに、それらの有用性が示される。

本研究は腸内細菌叢に着目し、閉経後女性におけるエクオール産生能、血管の動脈硬化に関わる動脈スティフネス等の指標、食事因子との関連を明らかにすることを目的とした。健康な閉経期女性28名を対象としたところ、エクオール産生者は11名(39%)、エクオール非産生者は17名(61%)であった。エクオール産生者の上腕血圧や脈波伝播速度は、非産生者にくらべ低値傾向であったが、頸動脈スティッフネスβに差は認められなかった。エクオール産生者の魚介類の摂取頻度が非産生者に比べ高値であったが、統計的な有意性は認められなかった。腸内細菌叢では、エクオール産生者のVerrucomicrobiaの割合が、非産生者に比べ有意に高値であった。エクオール産生能は、特定の腸内細菌叢に関連がある可能性が示唆された。今後、動脈硬化に関連する指標、エクオール産生能、腸内細菌叢、および栄養素等の関連性について詳細な解析が必要である。

 

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