メールマガジン「Nutrition News」 Vol.214
2019年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
地域在住高齢者におけるオーラルフレイルが身体組成、栄養状態に及ぼす影響
東京都健康長寿医療センター研究所本川 桂子 先生
2019年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
地域在住高齢者におけるオーラルフレイルが身体組成、栄養状態に及ぼす影響
東京都健康長寿医療センター研究所本川 桂子 先生
要旨
口腔機能が低下した状態であるオーラルフレイル(OF)は高齢者のフレイルやサルコペニア、要介護状態や死亡のリスクとなることから、口腔機能の低下した高齢者を早期に発見し適切な対応を行うことが重要である。しかし地域在住高齢者のOF該当率や、OFに該当した者がどのような食品を摂取しているのかは明らかではない。そこで本研究では、後期高齢者の質問票の基となった基本チェックリストを用いてOFの有無を評価し、OFの対象者が摂取している食品および栄養素を明らかとすることとした。
後期高齢者の質問票に採用されている基本チェックリストの質問項目でOFを評価したところ、32.9%がOFに該当した。年齢別のOF該当率の検討では、前期高齢者で28.2%、後期高齢者で40.1%であり、後期高齢者で急激に該当率が増加することが明らかとなった。加えて、本研究により高齢者の摂取している栄養素には、男女間で大きな差があることが明らかとなった。男性では菓子類の摂取量がOFでロバストより有意に高値を示した。女性では、たんぱく質エネルギー比がロバストで有意に高く、炭水化物エネルギー比はOFで有意に高値を示した。OF該当者に対して栄養指導を行う場合は、画一的な指導を行うのではなく性別などの対象者特性を踏まえた指導が必要であると考えられ、今後介入研究、縦断研究等による詳細な検討の必要性が示された。