メールマガジン「Nutrition News」 Vol.143
2014年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
テーラーメードプロバイオティクスを目指したビフィズス菌の健康増進関連遺伝子群の機能ゲノム生物学的解析
岐阜大学大学院 連合農学研究科
2014年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
テーラーメードプロバイオティクスを目指したビフィズス菌の健康増進関連遺伝子群の機能ゲノム生物学的解析
岐阜大学大学院 連合農学研究科
鈴木 徹 先生
ビフィズス菌はヒトをはじめとする動物の腸内に生息する腸内細菌であり、近年、便秘下痢の症状緩和、免疫賦活、アレルギー症状の緩和、病原菌への耐性付与など、様々な健康促進作用を有していることが明らかになりプロバイオティクスとしても注目されています。これらの健康増進作用を発揮するには、ビフィズス菌の持つ細胞外多糖が重要な役割を担っているのではないかと考えられています。また、腸内にはヒトごとに糖のトランスポータ遺伝子群、糖鎖合成系遺伝子系が異なった菌株が定着しており、それらの菌ごとに大腸菌O-157に対する抵抗性が大きく異なることを明らかになってきました。しかし、これまでビフィズス菌において遺伝子破壊など技術が確立されていなかったため、その分子メカニズムはほとんど明らかにされていません。
我々は、これまでにビフィズス菌のゲノム情報に基づく革新的遺伝子操作技術に挑戦し、①形質転換効率を105倍向上させること、②新たに温度感受性プラスミドを構築し、これを用いて高効率の遺伝子破壊系 を確立することにより、世界で初めてビフィズス菌における実用的なレベルでの遺伝子操作が可能にしてきました。今回は、ビフィズス菌のプロバイオティクス効果と腸内共生メカニズムを解明する手始めとして、Bifidobacterium longumにおける健康増進関連遺伝子群の破壊株コレクションの構築を目指して研究を行いました。
我々は、これまでにビフィズス菌のゲノム情報に基づく革新的遺伝子操作技術に挑戦し、①形質転換効率を105倍向上させること、②新たに温度感受性プラスミドを構築し、これを用いて高効率の遺伝子破壊系 を確立することにより、世界で初めてビフィズス菌における実用的なレベルでの遺伝子操作が可能にしてきました。今回は、ビフィズス菌のプロバイオティクス効果と腸内共生メカニズムを解明する手始めとして、Bifidobacterium longumにおける健康増進関連遺伝子群の破壊株コレクションの構築を目指して研究を行いました。
要旨
本研究では、①Bifidobacterium longum105-Aの全ゲノム解析、②ビフィズス菌のプロバイオティクス効果と腸内共生メカニズムを解明するためのBifidobacterium longum NCC2705株における双方向性マーカーを用いたマーカレス遺伝子破壊法の確立、および③Bifidobacterium longumにおける健康増進関連遺伝子群(二成分制御系遺伝子)の破壊株コレクションの構築に取り組んだ。これまでに幾つかの有用な遺伝子破壊技術を確立することができ、それらを利用し、今後は、二成分制御系以外にも多糖合成系遺伝子群と細胞接着遺伝子に範囲を広げ、ビフィズス菌の健康増進の分子メカニズムを明らかにすることを目指したい。