2016/04/05

Vol.137(3) 健康・栄養に関する学術情報 「過敏性腸症候群の病因」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.137
健康・栄養に関する学術情報
過敏性腸症候群の病因
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)とは、腹痛と便通異常(便秘、下痢、もしくはその交替)が関連し合いながら慢性に持続し、かつ、「通常の臨床検査では」愁訴の原因となる器質的疾患を認めないという最も代表的な機能性消化管疾患です。しかし、その病因はいまだ完全には解明されていません。一方、IBS の病態生理においては中枢神経系と消化管の機能的関連、すなわち、脳腸相関が非常に重要な役割を果たしています。今回はその病因について、外因と内因、ならびに、中枢神経系水準と消化管水準に分類して論じた総説論文を紹介致します。なお、本論文の著者の福土審先生には第18回ダノン健康栄養フォーラム「腸内細菌と健康」(10月8日、有楽町朝日ホールにて開催)でご講演頂く予定です。
 
(内容)
消化管の外因として最近特に着目されているのが腸内細菌であり、次いで食物である。急性腸炎患者は高い確率でIBSを発症する。患者では腸内細菌叢の構成や腸内細菌による代謝産物量の変化がみられる。一方、抗菌薬やプロバイオティクス投与による改善がみられる。また、食物成分により症状に影響するものがある。 その他、中枢神経系の外因として関与が確実なのは、患者に負荷される心理社会的ストレッサーである。消化管の内因として粘膜炎症が重要であり、最近、炎症に関連した現象として粘膜透過性亢進が着目されており、これらの背景にはゲノムがある。中枢神経系の内因として、ゲノム、エピゲノム、神経可塑性が存在する。

 参考

  
詳細は下記論文をご参照下さい。
 
福土 審
「過敏性腸症候群の病因」
日本消化器病学会雑誌,2014; 111:1323-1333
 
本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/111/7/111_1323/_pdf

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