健康・栄養に関する学術情報
腸内にいる多種類の細菌の分類法はどうなっているの?
近年、細菌の分類は、細菌のリボソームを構成する小型のサブユニット(16S)に存在するRNAをコードする遺伝子(16S rRNA遺伝子)の塩基配列の比較による系統的な分類が主流となっています。このような分類手法による解析の結果、新たな菌属や菌種が報告されたり、菌属名や菌種名が変更、抹消されたりと著しく変貌しています。これらを整理することは、腸内菌叢の生態や機能の解明に不可欠です。
現在、すべての細菌はArchaeaドメインの5つの門(Phylum)とBacteriaドメインの30の門に分類されています。このうち、ヒトの腸内に見られるのはArchaeaドメインでは1つの門(8菌種)とBacteriaドメインの11の門(957菌種)であり、中でもBacteriaドメインの4つの門(Firmicutes, Bacteroidetes, Actinobacteria,およびProteobacteria)だけでそのほとんどが占められるとされています。
分類手法の進展により多くの新菌属、新菌種が提唱されている一方で、消化管内で培養可能な細菌は全体の20~40%とも言われています。分子生物学的研究で報告されている腸内細菌の多くは難培養、難検出のため未分類となり、その存在は、腸内菌叢と宿主との関連を究明する上で障害となります。これらの細菌の新たな分離手法の成果が期待されています。
参考
詳細は下記論文をご参照下さい。
藤澤倫彦 「ヒト腸内グラム陽性細菌の分類の現状–嫌気性Phylum FirmicutesおよびPhylum Actinobactreriaを中心に」
腸内細菌学雑誌 第30巻 第4号 177-190 (2016)
本論文はオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/30/4/30_177/_pdf/-char/ja