2020/09/14

Vol.198 (2) 2018年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告 「極早産児における社会的認知機能の発達と栄養との関連について」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.198
2018年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
極早産児における社会的認知機能の発達と栄養との関連について
順天堂大学 医学部 小児科     
細澤 麻里子 先生

要旨

 生後早期の栄養と全般的認知発達との関連は検討されていますが、社会的認知機能との関連についてはいまだ報告が少ないことが知られています。
 筆者らは視線計測や心の理論課題など、複数の手法を用いて社会的認知機能の定量評価を行うことで、極早産・極低出生体重児の社会的認知機能と周産期ならびに小児期の栄養状態との関連性について検討しています。

 

【要旨】

背景:極早産・極低出生体重児は社会性の問題を抱えやすく、その背景として社会的認知機能の障害が指摘されている。栄養は発達期の脳にとって重要な要素であるが、極早産・極低出生体重児の社会的認知機能の発達と栄養との関連の検討は少ない。

方法:2018年に当院を定期受診した極早産・極低出生体重児18名を対象とし、アニメーション版心の理論課題ver2及び簡易型自記式食事歴法質問票小中高校生用を実施し、心の理論課題の正答数と栄養摂取量および周産期要因との関連を検討した。

結果:対象児の平均在胎週数は29.6週、平均出生体重は1057.7gであった。心の理論課題の正答数は在胎週数や出生体重、経腸栄養確立日数を含めた複数の周産期要因との関連を認めたが、検査時年齢及び在胎週数、出生体重を調整した重回帰分析の結果、経腸栄養確立日数のみが正答数と関連を認めた。学童期の栄養摂取と正答数の相関はみられなかった。

考察:本研究からは極早産・極低出生体重児の社会的認知機能の発達と学童期の栄養摂取との関連はみられず、周産期の栄養が関連していることが示唆された。本研究は予備的調査であり、今後さらに対象児を増やし検討することが必要である。

 

 

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