メールマガジン「Nutrition News」 Vol.122「食品の新たな機能性表示制度」
現在、我が国で食品の機能性を表示できるのは「栄養機能食品」と「特定保健用食品」に限られており、これら以外の食品に機能性表示を行うことは、食品衛生法や健康増進法により禁止されています。しかし、栄養機能食品については対象成分が限定されていること、特定保健用食品については、その安全性や有効性について、食品ごとに臨床試験が必要であり、時間も費用もかかるため、中小企業にはハードルの高いものであることが指摘されていました。
このような中、平成25年6月に規制改革実施計画が閣議決定され、企業等の責任で、科学的根拠をもとに食品に機能性表示を行うことができる新たな機能表示制度(以下「新制度」)について検討されることになりました。消費者庁の下に設置された「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」により、同年12月より8回の検討が重ねられ、平成26年7月に報告書がまとめられました。
米国の機能性表示制度を参考に
新制度は、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度(以下「DS制度」)を参考に検討されました。 DS制度とは、食品医薬品局(FDA)が定めた規制の下、事業者の自己責任で構造や機能の表示を行うことができるものです。DS制度では、疾病リスク低減表示や、疾病名を含む表示等は原則として禁止されています。また、国の評価を受けたものではない旨、疾病の治療を目的としたものではない旨の表示が必須とされています。
しかし、DS制度にも様々な問題点があります。例えば、製品の有効性に関する科学的根拠情報が得られない可能性があることです。DS制度においては、有効性に関する表示内容の根拠情報を開示するかは事業者の任意であるからです。また、科学的根拠が不十分な製品が流通している可能性等も指摘されています。
これらのDS制度の問題点を踏まえ、新制度は、安全性や有効性の科学的根拠のレベルを適切に設定し、科学的根拠を含む製品情報について透明性の高い制度となるよう検討されました。その結果、最終製品を用いた臨床試験の実施か、最終製品もしくは機能性成分に関する研究論文のシステマティックレビューの実施により、機能性の根拠を評価することとされました。
消費者にとって誤認のない機能性表示
新制度は、食品全般を対象としていますが、アルコール飲料や、ナトリウム・糖分等の過剰摂取につながる食品については、一定の機能が認められたとしても、摂取による悪影響を否定できないため、対象外となっています。対象者については、生活習慣病等の疾病に罹患する前の人、又はその境界線上の人としています。既に疾病に罹患している人(医薬品等により治療されるべき人) に対して機能性を訴求するような製品開発や販売促進は行わないこととされています。同様に、未成年者(製品の利用等についての判断力が不十分である可能性があるため)、妊娠計画中の人を含む妊産婦(安全性に関する情報が十分ではないため) への訴求もしないこととなっています。
また、従来の制度下では薬事法の規制により認められていなかった“身体の特定の部位”に言及した表現が可能であることも、新制度の特徴の1つです。これは、厚生労働省より「当該範囲内であれば、身体の特定の部位に言及した表現のみをもって、直ちに医薬品に該当するとは判断しない」という方針が示されたことによるものです。ただし、疾病の治療効果や予防効果を暗示するような表現や、「肉体改造」のように、健康の維持・増進の範囲を超えた表現は、薬事法の規制対象となります。
消費者に誤認を与えないためには、機能性に関する情報の開示も必要です。国の評価を受けたものではない旨、疾病の予防や治療を目的としたものではない旨等について容器包装に表示する他、表示内容に関する科学的根拠について、容器包装への表示以外の手段を用いて情報開示をすることとされています。
なお、該当する食品を販売しようとする企業は、安全性や有効性等の科学的根拠を含む製品情報について、販売前の定められた期日までに、消費者庁に届出を行うこととされています。販売後には、消費者庁が中心となって監視を徹底することにより、適切な運用を図ることが求められています。
消費者庁は、この報告書の内容を踏まえた「食品表示基準及び新たな機能性表示制度(案)」を平成26年8月に作成しました。新制度は、パブリックコメント、説明会等を経て、平成27年6月27日までに施行される予定です。
参考
・食品の新たな機能性表示制度に関する検討会 (消費者庁)
・食品表示一元化情報(消費者庁)