開会挨拶
公益財団法人ダノン健康栄養財団 理事長
東京大学 名誉教授
清水 誠
フランスに本社を置く国際的食品企業ダノングループが設立した非営利学術組織「公益財団法人ダ
ノン健康栄養財団」と「公益社団法人日本栄養士会」の共催により毎年開催している本フォーラムで
すが、オンラインで開催するようになって 3 年目になりました。毎年会場に来られて講演や討論を聴
くことを楽しみにされていた方々には大変申し訳ありませんが、日本全国どこからでもアクセスで
き、好きな時に繰り返し視聴できるオンラインフォーラムを、一歩進んだ講習会の在り方としてぜひ
前向きにとらえていただければ幸いです。
変貌を迫られているのはフォーラムの実施方法だけではありません。フォーラムで議論すべき内容
も変化を迫られています。新型コロナ感染拡大と時を同じくして、地球規模の気象変動や国家間の対
立が顕在化し、地球上の食糧の生産・流通にも暗い影を投げかけています。「人々の健康を向上させ
るための栄養や食事を考える」というダノン健康栄養フォーラムの目標も、今までとはだいぶ違うス
テージに移動していくことが予想されます。いろいろな食材や食品がいつでも自由に入手でき、望む
ままに食べていた時代と違い、これからは限られた食材、新規の食材をどのように利用すればいいの
か、新しい生活様式の中での食はどうあるべきなのかについても、より一層真剣に考えなければなら
ないでしょう。
今回のオンラインフォーラムでは、「環境と健康の両者を守る食事とは」をテーマとして、地球上
で暮らす我々が抱える食料問題や、最近注目されている食素材や食品新技術に関する講演、及びこれ
からの管理栄養士・栄養士が担うべき新しい役割について考えるパネルディスカッションを実施する
ことに致しました。
基調講演では、東京農業大学副学長の上岡美保教授に、人口問題~食糧生産~地球環境の視点から食
料問題を総括していただきます。次いで、京都大学大学院農学研究科の廣岡博之教授に、持続可能な食
の中では批判的に取り上げられることも多くなった畜産物の価値と生産の課題について、また宮城大学
食産業学群の石川伸一教授に、食の未来を支えることが期待されているフードテック(食品関連の新技
術)について講演をしていただきます。さらに、日本栄養士会理事で兵庫県保健医療部に勤務されてい
る諸岡歩さんに「人と地球の健康を支える管理栄養士・栄養士」と題して講演をいただき、その後、他
の講演者の先生方にもご参加いただいてパネルディスカッションを行うという予定です。
これまでのような栄養や健康の問題を前面に出したフォーラムとはいささか趣を異にすると感じ
られるかもしれませんが、今回のフォーラムで提供される様々な情報は、我々がこれからの食と健康
を考える時に知っておくべきものだと思います。本フォーラムが皆様の今後の活動においてお役に立
てば幸いです。