講演3

座長
愛知学院大学 心身科学部 健康栄養学科 客員教授
大澤 俊彦



「成長期のスポーツ栄養」
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科 教授
鈴木 志保子


 ジュニアアスリートは、アスリートであると同時に成長のスパート期でもある。生きてい くために栄養、運動(身体活動)、休養のバランスをとることが大切であるが、成長期は特 にこのバランスを崩さないように注意する時期であるといえる。一般的にアスリートは、運 動量が多く、強度の高い身体活動を行うことから、通常の栄養管理や休養の取り方では、コ ンディションを良好な状態に維持することは難しい。ジュニアアスリートの場合は、スポー ツによって身体活動量が多くなるだけではなく、成長のために必要なエネルギーや栄養素の 必要量も多くなることから、さらに難しい栄養管理になる。ジュニアアスリートの栄養を考 える際、栄養、運動、休養のバランスを乱すことのないように栄養管理をどのように行うべ きかが重要なポイントとなる。

ジュニアアスリートのエネルギーや栄養素の摂取で考慮しなくてはいけない重要な要素は、 「3食、補食をしっかりと十分に食べていても、栄養状態が悪いこともある」ということで ある。この状況を、成人のアスリートのエネルギー・栄養素摂取、ジュニアアスリートのエ ネルギー・栄養素摂取の問題点や課題、サプリメントの利用の3つの項目に分けて説明する。

また、ジュニアアスリートは、良好な栄養状態を維持するために、バランスよく食べなく てはならない。3食でとりきれなかった場合には補食を入れて補う。また、練習の終了時刻 の関係から夕食の時間が遅くなる場合には、間食を入れて、練習中にエネルギーや栄養素が 不足した状態にならないようにする。通常、間食とは、寝ているとき以外で食事と食事の間 隔が6時間以上あく場合に、夕食の一部分(主に主食)を間食として練習前に食べ、夕食で は、間食で食べた分を減らして食べることをいい、1日の食べる総量は変えずに間で食べる 食事である。成長期のアスリートの場合には、「夕食の時間が遅くなることから食べる間食」 と「3食ではとりきれないから食べる補食」の両方の意味を持つことになる。そこで、この 場合、夕食では、間食分を減らさず食べる。

ジュニアアスリートのめざましい活躍を目にすることが多くなった。その陰で、貧血や疲 労骨折などの故障からジュニアの時期に選手生命を絶たれる事態になることもある。栄養状 態を良好に保つことが、過度な運動を抑制することにもつながり、健全な成長を導くための 1つの指標になるといえる。ジュニアアスリートの栄養状態の把握として、「しっかりと食 べているから栄養状態は良い」との認識を改めてほしい。我が国のアスリートのさらなる飛 躍のために、ジュニアアスリートの栄養管理は重要である。

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