Vol.151(2) 第18回ダノン健康栄養フォーラムより 「栄養関連の平成28年度診療報酬改定について」

メールマガジン「Nutrition News」 Vol.151
第18回ダノン健康栄養フォーラムより
栄養関連の平成28年度診療報酬改定について
厚生労働省保険局医療課   
課長補佐 塩澤信良 先生
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 診療報酬は、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会の審議を踏まえ、2年ごとに改定が行われています。平成28年4月に行われた改定の内容は、①2025年(平成37年)に向けて、地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築を図る ②地域包括ケアシステムの推進と医療機能の機能分化・強化、連携に関する充実等に取り組む の2つが大きな柱となっています。

改定の背景と改定のポイント

 「地域包括ケアシステム」とは、昭和22~24年生まれのいわゆる“団塊の世代”が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制を実現していこうというものです。地域包括ケアシステムの中心となるのは“住まい”です。住み慣れた住まいを起点として、できるだけ近いところで医療や介護サービスを受けられる体制を、2025年までに目指していきたいと考えています。
 ところで、入院していた高齢者が退院した後に重要な問題となるのが、「栄養」や「食事」です。入院中は、医師や管理栄養士による栄養管理が行われ、適切な食事が出されますが、退院して帰宅した後にそれを自分で行うことができなければ、再び病院や介護施設にかかることになるかもしれません。地域包括ケアシステムの構築に向けては、医療・介護機関と自宅などを切れ目なくつなぐ、適切な栄養管理を行なえるような支援が重要です。今回の診療報酬改定では、その点を踏まえて栄養食事指導の拡充が行われました。具体的な改定内容は、大きく3つ挙げられます。

① 個別栄養食事指導の対象の追加
 管理栄養士が行う栄養食事指導の対象が大きく広がったことが、今回の改定におけるトピックスの一つです。従来、その対象は肝臓食、腎臓食、糖尿食など厚生労働大臣が定める特別食を必要とする患者への指導に限られていましたが、がん、摂食・嚥下機能低下、低栄養の患者に対する治療食の指導について、新たに保険請求の対象になりました。

② 外来・入院栄養食事指導料における指導時間の要件、点数の見直し
 栄養食事指導には時間がかかります。日本栄養士会のデータによると、入院の指導や外来の指導は、初回では平均で45分程度、2回目以降でも平均30分程度を要しています。また、高齢のがん患者への栄養食事指導の場合、平均1時間程度かかっているのが現状です。しかし、従来の外来・入院栄養食事指導料では、概ね15分以上の指導で130点とされており、どれだけ時間をかけたとしても点数は変わりませんでした。今回の改定では、より充実した指導を適切に評価する観点から要件と点数が見直され、初回の場合は概ね30分以上の指導で260点、2回目以降は概ね20分以上の指導で200点となりました(1点=10円)。
 なお、栄養食事指導の際には、医師から管理栄養士に指示が出されます。その指示内容について、これまでは、少なくとも熱量・熱量構成、蛋白質量、脂質量についての具体的な指示をすべて医師が行わなければいけないとされていました。その点も今回の改定で見直され、医師が必要とする項目以外は管理栄養士が必要に応じて方針を示すことができるようになりました。

③ 在宅患者訪問栄養食事指導料の指導要件の緩和
 これまでは、在宅患者の指導の際には、調理実技を伴わなければ保険請求することができませんでした。しかし、患者が必ずしも調理実技を必要としているとは限りません。患者の実情に応じた有効な指導が可能となるよう、「調理実技」が要件から外されました。

その他の改定内容

 他にも次のような改定が行われています。
・入院時の経腸栄養用製品の給付の見直し
 市販の経腸栄養用製品のみを経管栄養法で提供する場合の入院時食事療養費の額が、現行の1割程度の引き下げとなりました。なお、少量の飲料や食品を経口摂取していても、食事の大半を市販の経腸栄養用製品が占めていれば引き下げの適用となります。
・「週単位」「月単位」の考え方の明確化
 「週」については「日曜日から土曜日の1週間」、「月」については「月の初日から月の末日までの1か月」を単位として算定することが明示されました。
・認知症ケア加算の新設
 身体疾患のために入院した認知症患者に対し、多職種からなる専門チームを設けて介入を行った際には「認知症ケア加算」として評価されるようになりました。「認知症ケア加算1」の施設基準では、患者の状態に応じて、専門チームに管理栄養士が参加することが望ましい旨が明記されています。

医療に携わる管理栄養士に期待すること

  管理栄養士は患者に寄り添いながら、嗜好、生活条件、栄養素・エネルギーなど様々な複雑な情報を整理して、実行可能性の高い食事を考えて提案できる唯一の専門職です。その複雑さゆえに、他の職種が理解できないという状況になる可能性もあるでしょう。病院の中で他職種と連携する時には、「なぜ、このような栄養管理、栄養指導が良いのか」という“考えのプロセス”を可視化していただきたいと思います。また、入院していた患者が他の病院や介護保険施設に移る場合には、他施設との連携も重要になってきます。「自分の病院ではなぜこのような栄養管理、栄養指導を行ったのか」を、他施設に対しても可視化していただきたいと思います。病院から在宅(時には他施設)に、いかに切れ目なくつないでいくか―その鍵になるのが栄養、食事です。国としても、管理栄養士の役割にとても期待しています。

その他の改定内容など、詳しくは厚生労働省ホームページをご確認ください。
平成28年度診療報酬改定について(厚生労働省) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106421.html
 
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