メールマガジン「Nutrition News」 Vol.110
健康・栄養に関する学術情報

腸内細菌が作り出す大豆イソフラボン代謝産物の有用性と安全性 エクオールの可能性
 
われわれが摂取した食品や薬剤中の成分の中には、腸内細菌による代謝を受けて化学構造が変化し、身体への作用が変化するものがあります。その代表例としてイソフラボンがあります。イソフラボンはほとんどのマメ科植物に含まれる化学物質で、その化学構造が女性ホルモンであるエストロゲンと類似しています。弱い女性ホルモン用活性を持ち、「骨の健康維持に役立つ」特定保健用食品のほか、更年期障害や2型糖尿病の改善に、改善に乳癌や子宮体癌のリスクを減らすことなどが期待されています。大豆イソフラボンの一種であるダイゼインは腸内細菌によりエストロゲン活性のより強いエクオールに変化しますが、腸内細菌は個人ごとに異なり、エクオール産生菌を保有する人は日本人の30-50%と報告されています。
今回はエクオールの特に骨代謝調節作用について解説した論文を紹介します。
 
動物試験では、閉経後骨粗鬆症モデル動物でエクオール投与により骨量減少が抑制されること、腸内でのエクオール産生を増やすと言われる食物繊維をダイゼインと併用して与えるとダイゼイン単独投与と比べて有意に骨減少が抑制されることなどが認められています。腸内細菌の変化として、ダイゼインとレジスタントスターチ(食物繊維の一種)を併用摂取させた群ではビフィズス菌が増加しClostridium cluster XIが有意に減少することが認められました。さらに、ヒトを主とした腸内由来のいくつかの菌株がエクオール産生菌として報告されています。
ヒト試験では閉経後女性に大豆イソフラボン(75mg/日)を1年間与えた結果、大腿骨近位部の骨量減少を抑制する効果が認められましたが、その効果はエクオール産生者の方に強く認められました。さらに、エクオール産生しない閉経後女性にエクオール(10mg/日)を1年間与えたところ骨吸収マーカー(骨の減少をあらわす)である尿中デオキシピリンジノリンが有意に低下しさらに骨密度の低下が抑制されました。一方、甲状腺ホルモン関連など安全性に問題のあるデータは認められませんでした。

 参考

  
 詳細は下記論文をご参照下さい。
 
 石見佳子、東泉裕子
 腸内細菌が作り出す大豆イソフラボン代謝産物の有用性と安全性 エクオールの可能性
 化学と生物 51 (2) : 74–77,2013
 
 本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/51/2/51_74/_pdf
 
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