メールマガジン「Nutrition News」 Vol.103
「より細やかで具体的な内容に改訂 -標準的な健診・保健指導プログラム-」
 平成18年に行われた医療制度改革により、メタボリックシンドロームに着目した健診・保健指導の実施を医療保険者に義務付ける仕組み(特定健診・特定保健指導)が導入されました。生活習慣病の予防及び医療費の適正化を目的として平成20年から5か年計画として実施されてきたこの制度は、平成24年度をもって第1期を終え、平成25年度から第2期がスタートしています。
 
  「標準的な健診・保健指導プログラム」は、効果的な健診・保健指導のために、これらに関わる医師や保健師、管理栄養士などが理解しておくべき点をまとめたものです。従来用いられてきた「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」においても、健診・保健指導の実施者を一層支援する方向で見直しが行われ、平成25年4月、従来より細やかな対応を示した「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】」(以下【改訂版】と記載)として公表されました 。
 
 
「標準的な質問票」各項目について、解説と回答の活用例を提示

 特定健診の基本的な健診項目の中に、「標準的な質問票」があります。この質問票は、服薬状況や既往歴・現病歴、生活習慣や生活習慣の改善意思などについての22の質問から成り、従来の国民健康・栄養調査や労働安全衛生法における質問を踏まえて設定されています。

  【改訂版】では「標準的な質問票」について、各質問項目に関する科学的根拠やその出典などが明記されるとともに、質問項目設定の意図や、回答に対する対処法が記載されるなど、保健指導で活用できる具体的な記載が充実しました(表1) 。

 
表1 「標準的な質問票」の解説と回答の活用例(一部抜粋)
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(標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】より抜粋)
 
 
アルコールのリスクに着目した保健指導の強化
 
 飲酒量が一定量を超えると脳梗塞や虚血性心疾患などのリスクが高まることが知られています。【改訂版】では、アルコールのリスクに着目した保健指導を行うことが望ましいとされ、アルコール問題のスクリーニングや減酒支援の手引きを掲載しています。
 WHOが問題飲酒を早期発見する目的で作成したアルコール使用障害同定テスト(AUDIT:Alcohol Use Disorders Identification Test)は、世界でも最もよく使われるスクリーニング法です。また減酒支援(ブリーフインターベンション)は、対象者の飲酒行動に変化をもたらすことを目的とした短時間のカウンセリングを行うもので、海外では活発に用いられています。
 この手引きは、特定健診における標準的な質問票で、日本酒換算で1~2合以上のアルコールを「毎日」または「時々」飲むと答えた人に活用することが勧められています。
 AUDITは10の質問で構成されています(表2)。合計スコアが0~7点の場合は問題飲酒なしと考えられるため介入不要、15点以上の場合はアルコール依存症が疑われるため専門医療機関への受診につなげます。
 8~14点(問題飲酒ではあるが、アルコール依存症までは至っていない)の場合、減酒支援を行います。具体的には、普段の飲酒状況の詳細を確認した上で「週に2日休肝日をつくる」などの減酒目標を立て、対象者につけてもらう飲酒日記をもとにフォローアップ支援を行います。このような簡単な支援によって飲酒量が減り、その効果が比較的長く続くことが多くの研究によって示されています。
 
表2 アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)
vol103 hyo2
(標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】をもとに作成)
 
 
 健康日本21(第二次)がスタートし、健康寿命の延伸や健康格差の縮小などの実現に向けて53項目の具体的な目標が設定されました。特定健診・特定保健指導における種々の取り組みは、健康日本21(第二次)の推進、ひいては社会保障制度を持続可能なものとするためにも重要です。現場で健診・保健指導に携わる専門職には、対象者の生活習慣改善に関する知識だけでなく、健診結果などから病態を適切に判断し、必要に応じて受診勧奨するなど安全性を確保した対応をとることなど、幅広い能力が求められており、その役割により一層期待されていると言えるでしょう。 

 

    参考

 

・標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】(厚生労働省) 

 

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