メールマガジン「Nutrition News」 Vol.86

保育所における食事の提供ガイドライン
 子どもにとって食事は、発育や発達に欠かせないものであり、食事を通して積み重ねた経験は、子どもの心身を成長させます。保育所は子どもにとって家庭と同じように「生活する場」であり、保育所での食事は心身の成長において大きな役割を担っています。保育所の食事の提供形態は自園調理が中心であるものの、外部委託や外部搬入など多様化しており、それぞれ長所もあれば課題もあります。平成24年3月、厚生労働省は「保育所における食事の提供ガイドライン」を公表し、子どもの心身の健やかな成長や保育の質の向上のための食事の提供のあり方について示しました。

子どもの食をめぐる現状

 近年では、いつでもどこでも好きなものを食べられるようになってきました。また、働いている保護者が増え、食事の準備に時間をかけられないなどの場合も多くあります。このような社会環境の変化を背景に「食」をめぐる状況にも変化が見られ、食事に関する様々な問題も指摘されています。その1つが「朝食の欠食」です。朝食を毎日食べる子どもは、平成12年には87.3%でしたが、「早寝早起き朝ごはん」の推進などもあり、平成22年には93.3%に増加しました。一方で、子育て世代の大人の朝食欠食率は、20歳代では男性29.7%、女性28.6%、30歳代では男性27.0%、女性15.1%、40歳代では男性20.5%、女性15.2%と高くなっています。朝食をほぼ毎日食べている母親(1~3歳児の母親)の子どもが朝食をほぼ毎日食べている割合は94%ですが、朝食をほとんど食べない母親の子どもが朝食をほぼ毎日食べている割合は70%に減少するというデータもあり、乳幼児の食生活は保護者の食生活の影響が大きいことが分かります。逆に言えば、朝食の欠食を減らすためには、保護者の意識の改善が重要であるということです。
  また、家族と一緒に暮らしているにも関わらず一人で食事をとる「孤食」、子どもたちだけで食べる「子食」、複数で食卓を囲んでいてもそれぞれ食べている物が違う「個食」、ダイエットのために必要以上に食事量を制限する「小食」などの様々な「こ食」が、栄養バランス、食の嗜好、コミュニケーションなどの観点から問題となっています。

保育所の食事の提供をめぐる現状

 保護者の就労形態の変化にともなって、保育所で過ごす時間が長くなっている子どもも多くなっています。つまり、保育所は家庭と同じように子どもにとっての「生活の場」であり、保育所で提供される食事は子どもの心身の成長・発達に大きな役割を果たしています。
 保育所の食事の提供形態には「自園調理」「外部委託(自園の施設を用いて、外部の人材が調理を行う)」「外部搬入」があります。厚生労働省が全都道府県・指定都市・中核市の合計107自治体に保育所での食事の提供について調査を行ったところ、食事の提供形態は「自演調理」が90.7%と大部分を占め、「外部委託」は6.9%、「外部搬入」については「3歳未満を含む外部搬入」が1.4%、「3歳児以上のみ外部搬入」が1.0%でした。
  外部搬入を導入(又は予定)している保育所では、その理由として主に「コスト削減」を挙げています。一方、外部搬入の導入予定がない保育所では、「保育と連動した食育活動の低下」「食事内容の質の低下」をその理由として挙げています。多くの保育現場では、「食材を入手し、それがたくさんの人の手を経て食事になり、それを友達や先生とおいしく食べる」という一連の過程を体験させることによって、体だけでなく心の育ちを支援しています。外部搬入の場合は、このような点や、「食べる人と作る人の互いの顔が見える関わりのある食事」「アレルギーなどの個別対応」など種々の課題について対応方法を検討することが重要です。
  外部委託にも外部搬入と同様の課題があります。しかし、調理員が保育所の職員ではないものの、自園で調理するという点で外部搬入とは事情が異なります。外部委託の場合、保育所は、委託業者の職員が保育所の食育への取り組みや子どもの様子を理解し、食事の提供と保育を結びつけた業務を行えるようにすることが重要です。
 自園調理では、食育の推進やアレルギー食などの個別対応のしやすさ、職員間の連携のとりやすさなどのメリットが多くあります。しかし、自園調理の中で、本当に子どもに大切な食の提供や環境の工夫がなされているかを常に評価・改善する必要があります。保育所には栄養士の配置義務がないため、「子どもの成長・発達に合わせる」「季節感を取り入れる」「行事食を通して食文化に触れる」といった観点からの多様なメニュー展開が困難な保育所もあることが考えられます。このような場合では、行政の栄養士との連携をとってメニューの改善や工夫をするという方法もあります。しかし、保育に占める食の重要性が高いことや、保護者の「食」に対する意識低下などから、保育所が保護者と子供への食の支援を担う必要性が大きくなってくると思われます。そのため、食事の提供形態にかかわらず、栄養士の役割が重要となります。なお、アレルギー等、食事に特別な配慮が必要な子どもの割合の増加により栄養管理の重要性も高まっていることから、管理栄養士が配置されることがより望まれています。

保育所における食事の提供のあり方

 保育所で提供される食事は、子どもの発育・発達に応じて適切な栄養摂取に留意し、子どもにとっておいしく魅力的なものであるような配慮が必要です。また、子どもにとって食事の場が親しみとくつろぎの場となるよう、温かくゆとりのある食事の時間を確保し、物的な環境にも配慮しなければなりません。食事の場が人間的な信頼関係の基礎をつくることも重視し、子ども同士、保育士、調理員、栄養士、保護者や地域の人々などを含めて、様々な人と一緒に食事を作ったり食べたりする中で、「人と関わる力」が育まれるよう教育的配慮をすることも重要です。
 そのため、保育所の食事の提供が各保育所の保育内容と切り離して行われることのないように、食事の提供を含めた食育計画を、各保育所の保育計画に位置付けながら作成し、保育の質と同様に食事の質(食事の内容や食事の場の構成)についても評価・改善に努めることが必要です。また、専門的な配慮のされた食事を提供しているという特徴を活かし、家庭からの食生活に関する相談に応じ、助言・支援にあたることも求められています。

 

参考

・保育所における食事の提供ガイドライン(厚生労働省)
www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/shokujiguide.pdf

 

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